【生態】高濃度の二酸化炭素による海洋微生物の不可逆的変化
Nature Communications
2015年9月2日
全球的に重要な海洋シアノバクテリアが、高濃度の二酸化炭素(CO2)環境に対して不可逆的に適応するように進化することが明らかになった。この条件下で、増殖速度と窒素固定速度が上昇し、CO2濃度を現在の水準に戻しても、その変化が持続したのだ。この研究結果についての報告が、今週掲載される。
海洋シアノバクテリアは、大気中の窒素を固定して、他のプランクトン種が利用しやすい物質に変換することで、世界中の海洋の肥沃化に重要な役割を果たしている。これまでの研究では、大気中CO2濃度を高い状態にして特定のシアノバクテリアを増殖させた場合に窒素固定速度が上昇することが分かっていたが、それが長期間持続するものかどうかは明らかになっていない。
今回、David Hutchinsたちは、全球的に大量に生息するシアノバクテリアの一種であるTrichodesmiumを2100年の大気中CO2濃度として予測されたレベルに合わせた条件下で850世代(4年半)にわたって実験的に培養、増殖した。その結果、増殖速度と窒素固定が直ちに増加し、その状態が実験期間において持続した。そうした状態は、培養されたTrichodesmiumを現在のCO2濃度条件下に戻して培養し続けても維持された。
このように不可逆的に適応したTrichodesmiumは、窒素固定速度が上昇しただけでなく、日の出から窒素固定速度がピークに達するまでの所要時間が現在のCO2濃度条件下で3~5時間となるものが2100年のCO2濃度条件下で5~9時間となった。今回の研究で、CO2濃度の現実的な将来予測に基づく条件下で海洋微生物の生理状態に永続的変化が生じることが明らかになったが、このことは、世界中の海洋における栄養素の生物地球化学的循環と食物網の生態学的特性に甚大な影響を及ぼす可能性が高い。
doi:10.1038/ncomms9155
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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