気候変動が旅客機運航のコストに及ぼす影響
Nature Climate Change
2015年7月14日
米国のホノルルと西海岸を結ぶわずか3つの飛行経路だけを見ても、北太平洋上の風のパターンが変化すれば、燃料費が年間140万米ドル(約1億6800万円)増え、CO2排出量が年間460万kg増えることを報告するKristopher Karnauskasたちの研究論文が、今週のオンライン版に掲載される。Karnauskasたちは、この460万kgという数値を全世界の民間航空業界に当てはめると、人間の活動による全世界のCO2排出量が0.03%増加する可能性があるという見解を明らかにしている。
今回、Karnauskasたちは、ホノルルとロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル・タコマ国際空港それぞれを結ぶ3航路の、合計約25万回の飛行における飛行時間の変動を解析し、毎日実施される巡航高度での風の観測の記録と比較して、風のパターンの影響を明らかにした。
次にKarnauskasたちは、34の全球気候モデルを用いて、温室効果ガスによる気候強制に対する巡航高度での風の応答を計算した。これらのモデルの半数では、ジェット気流の出口部がハワイと米国大陸を結ぶ回廊に向かって広がることが予測された。Karnauskasたちは、こうした変化によって、これと同等の経路での1つの航空会社の1日1往復の飛行時間が約5.5時間長くなり、この結果を4つの航空会社の最も確からしい飛行回数に当てはめると、年間で燃料費が140万米ドル、CO2排出量が年間460万kg増えることが明らかになった。
また、Karnauskasたちは、こうした空気の流れの変化によって航空会社の化石燃料消費量が(当初は最大でも数%のペースで)増加し、それが全球気候強制にフィードバックされ、その結果、空気の流れがさらに変化する可能性があると結論付け、これに関係するダイナミクスのさらなる研究を行うべきだという考え方を示している。
doi:10.1038/nclimate2715
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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