注目の論文

低濃度分子を高感度で検出するバイオセンサー

Nature Materials

2012年5月28日

Biosensors for which less is more

標的分子の濃度が低いとシグナルが強くなるバイオセンサーが、今週のNature Materials電子版に報告されている。このバイオセンサーは、全血清中の癌バイオマーカー前立腺特異抗原を検出できるが、このような逆の感度を示すため、現行の超高感度アッセイの検出限界の10分の1未満の濃度でも検出が可能である。

従来のセンサーは濃度に正比例するシグナルを生成するので、確信を持って超低濃度の標的分子を検出することは困難であった。今回、Molly Stevensらは、プラズモニックナノセンサーとして金ナノスターを用い、さらにグルコースオキシダーゼ(GOx)という酵素を利用して銀ナノ結晶の結晶化速度を制御することにより、シグナル-濃度依存性が反比例するシグナル生成機構を設計した。つまり、GOx 濃度が低いと結晶化速度が遅いので、ナノスター表面に銀がコーティングされ、局所表面プラズモン共鳴のシフトという形で強いシグナルが発生する。これに対して、GOx濃度が高いと結晶成長が速くなるため、溶液中で銀ナノ結晶が形成されてしまいナノスターに銀が析出しにくくなるので、シグナルは弱くなる。

GOxは抗体と結合可能なので、このナノセンサーは、一般的に酵素結合免疫測定法において超低濃度抗原の検出に使うことができる。また、Stevensらは、このナノセンサーが他のタンパク質による干渉の影響を受けにくいことも示している。

doi: 10.1038/nmat3337

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