考古学:AIがラテン語の碑文を復元し、文脈を明らかにする
Nature
2025年7月24日
Archaeology: AI restores and contextualizes Latin inscriptions
ローマ時代のラテン語碑文の欠損部分を予測する人工知能(AI:artificial intelligence)ベースのツールを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。Aeneasと名づけられたこのツールは、テキストを他のテキストと関連づけることができ、歴史家に文脈の解釈を提供する。
毎年およそ1,500のラテン語の碑文が発見されていると推定されており、これらはローマ帝国の文化的および言語的生活についての洞察を与えてくれるかもしれないと考えられている。しかし、単語や文章は時間の経過とともに失われてしまうことがある。これらのテキストを復元し、正しい地理や時系列に位置づけるには、歴史家が他のテキストとの類似点を特定することで、より広い言語的および歴史的背景の中にそれらを位置づける必要がある。このような文脈化は、しばしば時間がかかり、個々の時代に関する広範な知識を必要とする高度に専門的な作業である。
Yannis AssaelとThea Sommerschieldら(Google DeepMind〔英国〕)は、古文書の文脈化を可能にする生成ニューラルネットワークAeneasを発表した。このツールは、長さが不確かな場合でも、欠損しているテキストを予測することができ、文脈やテキストの類似性を示唆することができる。Aeneasはまた、視覚的なイメージも考慮できるように開発されている。このネットワークの可能性を評価するため、著者らは23人の歴史家と共同研究を開始し、実際の研究シナリオでこのモデルを使用して、紀元前7世紀から紀元8世紀までの碑文を評価した。歴史家らは、Aeneasが提供した文脈の示唆が90%の事例で役に立ち、主要な作業における信頼性が44%向上したと報告した。歴史家とAeneasがペアを組んだ場合、復元と地理的帰属のタスクにおいて、歴史家やAI単独の場合よりも優れた結果が得られた。また、Aeneasは13年以内の年代測定も可能であった。
著者らは、Aeneasが歴史家を支援し、過去に対する私たちの理解を広げることができる革新的なツールであることを示唆している。
- Article
- Open access
- Published: 23 July 2025
Assael, Y., Sommerschield, T., Cooley, A. et al. Contextualizing ancient texts with generative neural networks. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09292-5
doi: 10.1038/s41586-025-09292-5
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