技術:音を聞き取る布地
Nature
2022年3月17日
Technology: Fabrics that can hear
音を効率的に検出できる特殊な繊維が編み込まれた布地を発表した論文が、Nature に掲載される。これらの布地は、ヒトの耳の複雑な聴覚系から着想したもので、双方向的なコミュニケーションに使用でき、音源定位を補助し、あるいは心臓活動のモニタリングに使用できる。
音の検出と処理ができる布地が開発されれば、さまざまな実用化(例えば、コンピューティング布地の進歩から保安や生物医学まで)の可能性が切り開かれるかもしれない。
今回、Yoel Finkたちは、音によって生じた振動が内耳の蝸牛に伝わり、そこで電気信号に変換されるという耳の複雑な構造から着想した新しいデザインの布地が、高感度マイクロホンとして機能することを明らかにしている。この布地には、圧電繊維という特殊な電気繊維が織り込まれている。圧電繊維は、布地の糸に織り込まれており、可聴周波数の圧力波を機械的振動に変換でき、その後、機械的振動を電気信号に変換できる。この過程は、蝸牛で起こる過程に似ている。この特殊化された圧電繊維が、布地の音響感度を高めるために必要とされる量はわずかであり、1本の繊維で、数十平方メートルの布マイクロホンを生成できる。この布マイクロホンで、ヒトの音声のような弱い音響信号を検出できる。この布地は洗濯機で洗うこともでき、ドレープ性もあるので、ウエアラブル用途に最適である。
今回の研究では、この布地で作ったシャツで、3つの主要な応用例が実証された。第1に、拍手が聞こえる方向を検出できた。第2に、この布地を着用した2人の間の双方向的コミュニケーションが容易になった。第3に、この布地を肌に当てて心臓のモニタリングを行った。Finkたちは、この新しいデザインの布地は、保安(例えば、発砲された方向を検出する)、補聴器利用者の音源定位の補助、心疾患や呼吸器疾患の患者のリアルタイムの長期モニタリングなど、さまざまな状況に応用できると予想している。
doi: 10.1038/s41586-022-04476-9
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