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天文学:新しい系外衛星の有望な候補天体

Nature Astronomy

2022年1月14日

Astronomy: A promising new exomoon candidate

我々の太陽系の領域の外側にある惑星を軌道運動する衛星である、系外衛星の新しい候補天体について報告する論文が、Nature Astronomy に掲載される。地球の2.6倍の大きさのKepler-1708 b-iが系外衛星であるという状況が確認されれば、系外惑星系の形成と進化を理解するために欠けているパズルのピースとなる可能性がある。

我々の太陽系に衛星は遍在するものの、系外惑星を軌道運動する衛星はいまだに確認されていないが、これまでKepler-1625 b-iのような候補天体は示唆されていた。木星や土星のように、恒星からある程度の距離を保って軌道運動する低温の巨大惑星は、衛星の形成に適した場所である。しかし、そのような惑星は、トランジット法(惑星­衛星系が恒星の前面を通過する際に生じる、わずかな明るさの変化を観測する、系外惑星を発見するための最も一般的な方法)で検出することが難しい。

今回、David Kippingたちは、系外衛星の痕跡を探すためにトランジット法を用いて、ケプラー宇宙望遠鏡によって発見された系外惑星を調査した。彼らは70個の低温(300 K、およそ27℃未満)のガス巨大惑星に注目した。それらは、それぞれの恒星を太陽と地球との距離よりも離れた距離、つまり1年より長い周期で軌道運動する。厳密な調査の結果、著者たちはKepler-1708 bと呼ばれる木星の大きさを持つ系外惑星の周りに、わずか1個の信号を発見した。この信号は、Kepler-1708 bの周囲に系外衛星Kepler-1708 b-iが存在することで最もよく説明でき、この信号が誤検出である確率は1%である。

著者たちは、Kepler-1708 b-iの信号の実在と、それに続く系外衛星の可能性としての状況を確認するためには、さらなる証拠が必要とされる可能性があると注意を促している。しかし、このような巨大な衛星の起源を理解することは、惑星形成理論に対する課題であると、著者たちは述べている。

doi: 10.1038/s41550-021-01539-1

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