注目の論文

【計算機科学】カーボンナノチューブ・マイクロプロセッサーを作って「Hello, World!」と表示させる

Nature

2019年8月29日

Computer science: Carbon nanotube microprocessor says “Hello, World”

1万4000個以上のカーボンナノチューブ(CNT)トランジスターで構成される16ビットマイクロプロセッサーが実証された。その設計方法と作製方法は、CNTの使用に伴う従来の課題を克服しており、CNTが先端マイクロ電子デバイスの材料として、シリコンの代わりに使用されるエネルギー効率の良い材料となる可能性が明らかになった。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。

電子デバイスの電源回路に使用されるシリコントランジスターは、もはやエレクトロニクスの進歩を可能にするための効率的なスケーリングができない段階に達しつつある。CNTは、炭素原子からできた微細な筒状の物質で、さらにエネルギー効率を高めた電子デバイスを構築するための材料としてシリコンに取って代わる可能性を秘めているが、固有の欠陥と特性のばらつきのために大規模システムへの応用が制限されている。

今回、Max Shulakerたちの研究グループは、これらの課題を解決するCNTマイクロプロセッサーを設計、構築するためのアプローチを考案した。このアプローチを構成する方法の1つが剥離プロセスで、トランジスターの正常な機能を妨げる恐れのあるナノチューブの絡み合いによる凝集体の形成を防止することを目的としている。また、ナノチューブの不純物が関係する問題の一部は、入念な回路設計によって克服されている。つまり、純粋に半導体ナノチューブが必要とされるのだが、それでも混入する金属ナノチューブについて、回路の機能性に影響を与えることなく存在し得る量の要件が緩和されたのだ。Shulakerたちが開発したRV16X-NANOという名のマイクロプロセッサーは、その検証試験で、「Hello, World! 私はCNTでできたRV16XNanoです」というメッセージを表示するプログラムの実行に成功した。

このマイクロプロセッサーは、業界標準の設計フローと設計プロセスを使って設計、作製されているため、今回の研究成果は、ポストシリコンのエレクトロニクスを担う方法として有望視されるとShulakerたちは結論付けている。

doi: 10.1038/s41586-019-1493-8

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