注目の論文
ランの花の美しさの謎を解き明かす
Nature Plants
2015年4月28日
Decoding the beauty of orchid flowers
ランの花の形は競合的な2組のタンパク質群によって決定されていることが、今週のオンライン版に掲載の論文で明らかにされる。この知見は、ランの花の多様な美を生む仕組みに関する理解を大きく発展させるものである。
ランの花は、通常の花弁とは別に、大型で形状が変則的な花弁「リップ(唇弁)」を有するものが一般的である。リップは送粉昆虫を誘引するとともに、昆虫が止まるための足場となる。このことは、生殖を促進することによってランに大きな進化的優位性を与えたと考えられている。
Chang-Hsien Yangたちは、花弁の発生に関係することが知られている遺伝子群の発現を調べた。成熟したランの花の発現パターンは、「L」複合体および「SP」複合体という2種類のタンパク質複合体が競争し、それぞれリップおよび通常の花弁の形成を促進することを示唆していた。研究チームはこの仕組みを「花被コード」と呼んでいる(花被とは花弁と萼片のこと)。
研究チームは、さまざまなタイプのリップと花弁が見られる多くの亜科のラン種が、全てこの花被コードにしたがっていることを明らかにした。2種のランでは、遺伝子サイレンシングを利用してL複合体の活性を抑制することにより、リップを花弁に変換することもできた。
この研究を取り上げたNews & Viewsの記事で、Barbara Gravendeelは、今回のタンパク質複合体の発見が「(物質的な利益が)ないのにランがどうやって送粉者を引き寄せ続けているのかを完全に理解するための重要なステップ」になると述べている。
doi: 10.1038/nplants.2015.46
注目の論文
-
5月9日
生物学:人為起源の地球規模の変化が感染症伝播リスクに影響を及ぼしているNature
-
5月8日
生態学:マッコウクジラの複雑な鳴音を調べるNature Communications
-
5月7日
遺伝学:APOE4遺伝子バリアントはアルツハイマー病の他とは異なる遺伝的タイプである可能性があるNature Medicine
-
5月3日
動物学:薬用植物を使って創傷治療を行う野生動物が初めて報告されるScientific Reports
-
5月3日
進化学:地球の磁場が弱くなっていたために地球上の生物の多様化が進んだのもしれないCommunications Earth & Environment
-
5月2日
人類学:長期的レジリエンスは苦難によって構築されるNature