注目の論文
パニックの神経化学
Nature Medicine
2009年12月28日
The neurochemistry of panic
オレキシンは、睡眠障害ナルコレプシーとの関連でよく知られている脳ペプチドだが、これがパニック障害の病態生理にもかかわっているとの報告が寄せられている。
パニック障害はパニック発作の繰り返しを特徴とする病気で、患者では脳の抑制が低下している証拠があり、また乳酸ナトリウムを静脈注射すると自律神経反応や呼吸反応が著しく高まることがわかっているため、これがパニック障害の一般的な検査となっている。ラットでは、DPHとよばれる脳領域が不安症状に似た状態にかかわっており、同様に乳酸ナトリウムの影響を受けやすい。
DPHには、覚醒や不眠にかかわるペプチド、オレキシンを含むニューロンが多数存在する。P Johnsonたちは、ラットでパニック不安にオレキシンが果たす役割を調べ、オレキシンニューロンの活性化がパニックを起こしやすい状態に結びつくことを発見した。視床下部のオレキシン遺伝子をRNA干渉で抑制したり、オレキシン受容体遮断薬を利用したりすることにより、パニック反応が起こらなくなった。
また、パニック不安をもつヒトは、パニック不安のない被験者に比べて脳脊髄液中のオレキシン量が増加していることもわかった。これらの結果は、オレキシン系がパニック障害の治療の新しい標的になる可能性があることを示している。
doi: 10.1038/nm.2075
注目の論文
-
5月9日
生物学:人為起源の地球規模の変化が感染症伝播リスクに影響を及ぼしているNature
-
5月8日
生態学:マッコウクジラの複雑な鳴音を調べるNature Communications
-
5月7日
遺伝学:APOE4遺伝子バリアントはアルツハイマー病の他とは異なる遺伝的タイプである可能性があるNature Medicine
-
5月3日
動物学:薬用植物を使って創傷治療を行う野生動物が初めて報告されるScientific Reports
-
5月3日
進化学:地球の磁場が弱くなっていたために地球上の生物の多様化が進んだのもしれないCommunications Earth & Environment
-
5月2日
人類学:長期的レジリエンスは苦難によって構築されるNature