注目の論文
統合失調症の解明に向けて
Nature Neuroscience
2009年11月16日
Understanding schizophrenia
Nature Neuroscience(電子版)に発表される論文によれば、神経伝達物質のシグナル伝達機能の障害により、統合失調症でみられるのとよく似た病的行動が生じることがある。これは、精神病に付随する障害の新たな治療標的を開発するうえで、重要な発見である可能性がある。
K Nakazawaらは、神経伝達物質であるグルタミン酸に特異的に機能する受容体を欠損したマウス系統を作出した。この受容体は認知機能、情動、記憶にかかわる脳領域に局在する抑制性ニューロンに存在する。欠損マウスは空間的作業記憶の変化や不安の増大など、さまざまな精神病の症状を発した。しかし、受容体機能障害が青年期以降まで起こらないよう遺伝子改変したマウスでは、精神病様の症状は現れなかった。つまり、グルタミン酸シグナル伝達障害が発達中に集中して起こると、異常行動の原因になることを示唆する。
統合失調症には遺伝的要因が考えられているが、グルタミン酸受容体の特定の変異とは関連付けられていなかった。今回のマウスモデルは、統合失調症における「グルタミン酸」仮説の検証を目的としている。これは、グルタミン酸シグナル伝達に影響を及ぼすさまざまな乱用薬物が、引きこもりや精神障害など、統合失調症の典型的な数々の症状をも誘発するという根拠に基づく仮説である。
ヒトの患者にこのようなグルタミン酸伝達の特異的変化が見いだされるかどうかはともかく、このマウスモデルは、精神病的行動につながる変化を理解するのに役立つだろう。
doi: 10.1038/nn.2447
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