注目の論文
細胞の発達を制御する遺伝因子
Nature Genetics
2009年4月20日
Gene elements that control cell evolution
細胞の形質転換過程や細胞が前駆体から成熟細胞に発達する過程を制御する複数の遺伝因子の根底にあるネットワークが、3つの大規模研究によって解明された。その成果を報告する論文が、Nature Genetics(電子版)に掲載される。
臓器が十分に発達して正常に機能するようになるかどうかは、成長途上の未成熟細胞と特定の機能を獲得した成熟細胞との適合性に依存している。成長から機能決定への切り替えについては、これまで解明されていなかった。
理化学研究所の林﨑良英とP Carninci、そしてクインズランド大学(オーストラリア)のJ Mattickがそれぞれリーダーとなった研究グループは、哺乳類ゲノムの機能解析(FANTOM4プロジェクト)の一環として、塩基配列を精密に解読する技術を用いて、細胞発達過程で生じる遺伝子発現の変化をゲノムワイドに評価した。Carninciのグループは、反復する可動性因子のゲノムワイドな発現に関して新知見をもたらした。Carninciらは、これまで知られていなかった250,000以上の転写開始部位が同定し、それに加えて、反復配列が、隣接する遺伝子全体の発現に与える機能的な影響を明らかにした。また、Mattickのグループは、活性な遺伝子の転写開始部位に位置する、新しいクラスの進化的に保存された短鎖RNAの同定という興味深い成果をもたらしている。ここに林﨑グループの先駆的研究が加わって、今回の3グループの研究は、成長途上の未成熟細胞から正常に機能する成熟細胞への切り替えを支える動的制御の枠組みを包括的に解明している。
doi: 10.1038/ng.375
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