注目の論文
脳への秘密の出入り口
Nature Immunology
2009年3月23日
A secret doorway into the brain
免疫細胞が血液脳関門を回避して脳へと入り、それがさらに他の免疫細胞の脳への侵入を許して病気を引き起こす仕組みが明らかになった。この発見は、自己免疫疾患である多発性硬化症(MS)の解明に大きな意味がある。
多発性硬化症やそのマウスモデル(実験的自己免疫性脳脊髄炎)に関連した病変が免疫細胞によるものであるとする研究結果をめぐって、論争が起きていた。F Sallustoたちは、免疫細胞が2回に分かれて脳に入ることを明らかにし、論争の解決に大きく近づいた。まず、ホーミング受容体CCR6を発現する細胞が脈絡叢(脊柱上部の血管の多い領域。ここの細胞は、脳脊髄液からの血液供給を分割する働きをする)を通って入る。これらの免疫細胞は、脳の内側に入ると脳組織への攻撃を開始し、血液脳関門の変化の引き金を引いて血液脳関門を漏出性にし、ほかの免疫細胞が脳に侵入できるようにする。これが病気の発症に結びつく。
重要なのは、同様のことがMS患者の脳組織で起こっていることが判明したことである。CCR6を発現するこれらの免疫細胞を標的にすればMS患者の治療法に結びつくかもしれないが、さらに研究が必要である。
doi: 10.1038/ni.1716
注目の論文
-
5月29日
社会科学:研究テーマの変更は被引用数の減少につながるかもしれないNature
-
5月28日
古生物学:クジラの骨から作られた最古の道具の証拠Nature Communications
-
5月27日
生態学:世界的に過小評価されている外来種のコストNature Ecology & Evolution
-
5月22日
微生物学:効果的な新しい抗マラリア薬は寄生生物を標的とするNature
-
5月21日
医学:非接触型無線モニタリングによる心臓不整脈の検出Nature Communications
-
5月20日
人工知能:大規模な言語モデルは、オンライン討論において人間よりも説得力を持つことができるNature Human Behaviour