注目の論文
細胞の寿命を延ばすスペルミジン
Nature Cell Biology
2009年10月5日
Inner workings of extending cell life
ヒトが老化するにつれて本来なら濃度が低下していくスペルミジンという分子を投与してやると、細胞の寿命が大幅に延びることがわかった。この知見は、特定の細胞種での寿命を延ばす仕組みを明らかにしている。
哺乳類細胞では、老化に伴ってさまざまな生化学的変化が起き、その1つが細胞に含まれるタンパク質分子であるスペルミジンの濃度低下である。スペルミジンは細胞の増殖と成熟に必要なことが知られているが、これが減少すると老化が起こるのか、それとも老化の結果として減少が起こるのかははっきりわかっていなかった。
F Madeoたちはショウジョウバエ、線虫と酵母にスペルミジンを投与すると、これらの生物の寿命が延びることを見いだした。また、スペルミジンをヒト免疫細胞の培養液に加えても、同様に細胞の寿命が延びるとわかった。この知見は、スペルミジンは細胞に対して寿命延長効果があり、ひいては生物の寿命も延ばすだろうことを示唆している。この効果はスペルミジンが、細胞の「クリーンアップ」を行う代替的な機序を開始させるためである。スペルミジンは、損傷を受けた細胞にプログラムされた細胞死を開始させるのでなく、細胞内で生じた不必要な物質やおそらくは損傷で生じた破片のようなものを取り除く経路を作動させるのである。
doi: 10.1038/ncb1975
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