【感染症】季節性マラリア予防対策が特に有効な地域
Nature Communications
2012年6月7日
Infectious diseases: Raining on malaria’s parade
アフリカで季節性マラリアの罹患率が最も高い地域、つまり、予防薬投与プログラムの恩恵を最も多く得られる可能性のある地域が特定された。これらの地域では推定小児人口が多いことから、現在マラリア防除が十分に達成されていない諸国で、この予防プログラムを実施すれば、多数のマラリアの症状発現を回避し、数千人の死者を減らすことができる可能性が明らかになった。この研究結果を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
小児における季節性マラリアの化学的予防(SMC)は、マラリアの伝播に強い季節性が見られる地域での有望なマラリア防除方法とされる。しかし、薬剤によるマラリア予防法は、現在のところ、広範囲に実施されていない。今回、M Cairnsたちは、アフリカの56地域におけるマラリアの発生件数を12か月間連続して測定した。その結果、降水量に基づく十分な季節性が認められ、SMCによる予防効果を高い費用効果で得られる程度にマラリア発生件数の多い可能性の高い2つの広い地域が特定された。この2地域では、多くの5歳未満の小児がマラリア発症の危険にさらされているとCairnsたちは推定している。
また、Cairnsたちは、SMCを4か月間実施した場合の地域別効果予測を明らかにしたが、この予防対策が適切に効果を示すとされた一部の地域では、マラリアの発生に年2回のピークが見られ、気候がマラリアの発生に関連する点も指摘している。そして、1年のうちの4か月間にわたるSMC実施では、この2回のピークというシナリオが考慮に入っていないため、この場合にはSMCのさらなる改良が必要なことを注意点として示している。それでもCairnsたちは、今回の研究で得られた知見に基づいて単純なアルゴリズムを作成することができ、このアルゴリズムは、各国の政策立案者が国内の全域や一部地域でのマラリア発生件数がSMC実施に十分な季節性を有していると判断する際に役立つ可能性があると結論づけている。また、このアルゴリズムでは、SMC実施の効果を効能別と適用範囲別に示すことも可能だとCairnsたちは考えている。
doi: 10.1038/ncomms1879
注目の論文
-
10月3日
神経科学:ショウジョウバエの脳の完全な地図Nature
-
9月26日
ウイルス学:牛のH5N1型インフルエンザは搾乳によって広がる可能性があるNature
-
9月26日
進化:哺乳類の顎関節の起源を調査するNature
-
9月24日
生態学:タコと魚の狩猟グループにおける共同リーダーシップNature Ecology & Evolution
-
9月19日
気候変動:将来の干ばつは予想以上に長期化する可能性Nature
-
9月17日
神経科学:妊娠に伴う脳の変化を調査するNature Neuroscience