前立腺がんの遺伝的基盤の解明
Nature Genetics
2012年5月21日
Understanding the genetic basis of prostate cancer
男性のがんで2番目に多い前立腺がんにおける遺伝的変異が、2つの独立した研究で明らかになり、その結果を報告する論文が、今週、NatureとNature Genetics(それぞれオンライン版)に掲載される。これらの研究では、前立腺がんの進行と治療応答の根底にある特異的な遺伝的全体像の解明に役立つと考えられる知見が得られた。いずれの研究でも、変異を同定するためにエキソーム塩基配列解読(ゲノムのタンパク質コード領域の選択的塩基配列解読)が行われた。
L Garrawayたちは、前立腺がん症例の腫瘍検体とそれに対応する正常な組織検体(合計112組)について、全エキソームの塩基配列解読を行った。その結果、前立腺がんの複数の遺伝子において再発性変異が同定された。再発性変異が最も高頻度で起こっていたのがSPOP遺伝子で、この遺伝子変異は前立腺がんの6〜15%で発生するとされた。これは、前立腺がんの新たなサブタイプの特徴となるかもしれない。以上の研究成果を報告する論文は、Nature Geneticsに掲載される。
一方、A Chinnaiyanたちは、転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療症例と未治療症例(合計61例)の解剖検体などの検体を解析して、この致死的な前立腺がんサブタイプにおける変異の役割を調べた。この前立腺がんサブタイプへの進行は、「化学的去勢」であるアンドロゲン枯渇療法を強力に行った後で起こった。アンドロゲン枯渇療法は、数多くの前立腺がんが依存するアンドロゲンホルモンの影響を低下させることによる前立腺がんの治療法だ。今回の研究では、アンドロゲン受容体に影響する遺伝子の変異を含む少数の遺伝子変異が同定された。今回新たに同定された変異は、前立腺がんにおけるアンドロゲンシグナル伝達の調節異常の根底にある新たな機序を明らかにしており、ここから、抗アンドロゲン療法に対する耐性機構を突き止めることができる。この研究結果を報告する論文は、Natureに掲載される。
doi: 10.1038/ng.2279
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