神経科学:妊娠に伴う脳の変化を調査する
Nature Neuroscience
2024年9月17日
Neuroscience: Investigating pregnancy-related brain changes
妊娠中は人間の脳の領域が縮小する可能性があるものの、脳の領域間のつながりが良くなり、母親になることによる変化の影響を受けない脳の領域はわずかであることを報告する論文が、Nature Neuroscienceに掲載される。ある母親の脳スキャンを基にしたこの発見は、人間の妊娠前、妊娠中、および妊娠後の神経解剖学的変化に関する初めての包括的な地図のひとつとなる可能性がある。
女性の85%近くは、生涯のうち、少なくとも一度は妊娠し、毎年1億4000万人の女性が妊娠する。妊娠は体に生理学的変化をもたらすことが知られているが、それに対応する神経学的変化についてはあまり理解されていない。
Laura Pritschetらは、健康な38歳の女性の妊娠に関連した脳の変化を分析した。妊娠前の3週間(4回のスキャン)から3つの妊娠期間(トライメスター)にわたり(15回のスキャン)、そして産後2年(7回のスキャン)の試験期間終了まで、26回のMRIスキャンと血液検査を実施した。これらのスキャンは、8人の対照個体で観察された脳の変化と比較された。著者らは、妊娠9週目までに、特に社会的認知に関連するデフォルトモードネットワーク(DMN;default mode network)などの領域で、大脳皮質の体積と厚さの広範囲にわたる減少を発見した。また、白質微細構造、脳室容積、および脳脊髄液の増加も観察された。これらの変化は、エストラジオールおよびプロゲステロンのホルモン値の上昇と関連しており、一部は出産後も持続した。これらの変化の一部は、出産後2年経っても持続し、皮質容積および厚さの減少も含まれていたが、一方で、出産後2か月ほどで妊娠前の同様のレベルに戻ったものもあった。
妊娠が脳に及ぼす長期的な影響や、より幅広い人口におけるこれらの脳の変化の一貫性については、さらなる研究が必要であるが、今回の調査結果は、妊娠に伴う神経の変化についての理解を深めるものである。また、著者らは、周産期のメンタルヘルス(子癇前症や浮腫に関連する神経学的影響など)、子育て行動、および脳の老化にも影響を及ぼす可能性があると指摘している。
Pritschet, L., Taylor, C.M., Cossio, D. et al. Neuroanatomical changes observed over the course of a human pregnancy. Nat Neurosci (2024). https://doi.org/10.1038/s41593-024-01741-0
doi: 10.1038/s41593-024-01741-0
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