注目の論文

社会科学:党派性の強いニュースを選んでいるのはGoogle検索アルゴリズムではなくユーザー自身

Nature

2023年5月25日

Social sciences: People, not Google Search, choose partisan news

党派性の強いニュースや信頼性の低いニュースへのユーザーのエンゲージメントが生じるのは、ユーザー自身がそうしたコンテンツを好むからであって、そうしたコンテンツがインターネット上の検索エンジンのアルゴリズムによって提示されるからではないことを示唆した論文が、Natureに掲載される。今回の研究では、Google検索においてユーザー自身の党派的信念を反映した結果が突出して表示されることはなく、ユーザー自身がそのような情報源を積極的に求めていることが判明した。

検索エンジンのアルゴリズムについては、政治的に偏った検索ランキングなどを通じて、考えを同じくするコンテンツの消費を促進する可能性があることなど、数々の問題点が指摘されてきた。こうした意見は、ユーザーが反対意見に触れる機会を制限し、ユーザーのバイアスをさらに増幅させる、オンライン版の「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」の醸成に関する懸念を生み出している。

今回、Ronald E. Robertsonらは、人々がインターネットで閲覧するコンテンツの選択に対してGoogle検索結果が影響を及ぼすのかを調べるため、米国の二度の選挙期間中のパソコンでのネット閲覧に関するデータを分析する二波研究を実施した。2018年の選挙では262人と333人が研究に参加し、2020年の選挙では459人と688人が参加した。(なお、2018年の選挙では「強い党派性を持つ」参加者のオーバーサンプリングが行われた。)参加者には、特別仕様のインターネット閲覧ソフト拡張機能をインストールさせた。この拡張機能によって、二度の選挙期間中における(1)Google検索の結果ページでユーザーに提示されたURL、(2)検索結果のページに表示されたURLとのやり取り、(3)Google検索の結果に示されたURL以外のネット上のURLとのやり取りの3種類のデータが記録された。このデータセットには、32万8000ページを超えるGoogle検索結果と、それ以外の広範なネット閲覧による約4600万のURLが含まれている。情報源の党派性は、政治基盤間のより広範な情報共有パターンに基づいて採点され、参加者の自己申告による政治的傾向と比較された。

いずれの研究期間においても、参加者がネット閲覧全体においてエンゲージメントを示した党派性の強いコンテンツは、参加者がGoogle検索の結果によって曝露された党派性の強いコンテンツよりも多かった。この結果は、Google検索のアルゴリズムが、ユーザーの既存の信念を肯定するコンテンツにユーザーを誘導していなかったことを示唆している。Robertsonらは、こうした「エコーチェンバー」は、アルゴリズムによる介入ではなく、ユーザーの好みによって形成されるのかもしれないと考えている。また、Google検索の結果から得られたURLとGoogle検索の結果とは無関係に参加者がエンゲージメントを示したURLを比較すると、Google検索によって提示されたURLには信頼性の低いニュースが少ないことが明らかになった。両者間の差は、右派のユーザーの場合に最も大きかった。

doi: 10.1038/s41586-023-06078-5

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