農業:中国の人口高齢化が小規模自作農業の持続可能性を脅かしている
Nature
2023年2月23日
Agriculture: Ageing populations in China threaten the sustainability of smallholder farming
中国の地方部で人口高齢化が進み、小規模自作農業の経営規模と生産高が減少し、農業従事者の収入も減少していることを明らかにした研究論文が、今週、Natureに掲載される。最新の農耕技法の導入を奨励すれば、こうした減少を反転させ、これらの地域における農業の長期的な存続可能性を高められるかもしれない。
世界人口の高齢化が加速している。こうした人口構造の変化は、さまざまな部門に課題を突き付けている。その一例が農業で、特に小規模農家が大多数を占める地域が難しい課題に直面している。農業従事者の中でも高齢者は、若齢者と比較して、一般的に教育レベルが低く、最新の農耕技法を受け入れない傾向があるため、この部門の長期的将来性に対する懸念が生まれる可能性がある。
今回、Baojing Guたちは、中国全土で2015~2019年に収集された1万5000世帯以上の農村世帯(作物を耕作しているが家畜を飼っていない農家)のデータを検討した。その結果、2019年の実際の農業経営規模が、1990年の人口動態(高齢化率が2019年より低い)に基づいた2019年の農業経営規模の推定値より4%小さくなったことが判明し、このことが、人口高齢化と相関していることが明らかになった。また、可処分所得の減少(15%減)、労働生産性の低下(マイナス4%)、農業生産高の減少(5%減)も明らかになった。さらに、環境中への肥料の損失が3%増加し、非効率な農業が生態系に及ぼす影響について懸念を生み出している。
Guたちがデータをさらに検討したところ、数多くの農家を集めた形態や大家族形態での協業型農業に移行すれば、上述したマイナスの結果からの脱却を図ることができ、農業投入量、農業経営規模、農業従事者の収入をそれぞれ14%、20%、26%増加させることが分かった。こうした農業経営には、農業機械の共同利用や大規模農場間での高度な販売戦略の策定が含まれる。この協業型農業モデルは、教育レベルが高く、革新的で費用対効果の高い方法を採用する傾向を示す若手の農業従事者を引き付けることができる一方で、生ゴミの堆肥リサイクルによる農地への肥料供給などの戦略は、栄養素の浪費を削減し、温室効果ガスによる環境汚染の影響を抑制すると考えられる。
今回の研究は、中国において人口高齢化が小規模自作農業に及ぼしている影響を定量的に推定したものであり、政策変更によって革新的な農業戦略の採用を奨励することが、地方の農産業の活性化につながるかもしれないことを示唆している。
doi: 10.1038/s41586-023-05738-w
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