アルツハイマー病:開発中のアルツハイマー病予防薬は、認知機能低下に対して顕著な効果は及ぼさない
Nature Medicine
2021年6月22日
Medical research: Investigational drugs for prevention of Alzheimer’s disease do not significantly affect cognitive decline
アルツハイマー病の予防薬として開発中のガンテネルマブとソラネズマブの第2/3相臨床試験では、優性(顕性)遺伝性アルツハイマー病(DIAD)患者の認知機能低下に対して顕著な効果は見られなかった。
DIADはアルツハイマー病(AD)の全症例の1%以下と推定されている珍しいタイプのアルツハイマー病で、患者の持つ複数の遺伝子が病気の素因となる。DIAD患者には分かりやすい特徴が見られ、そのために無症状の段階と発症してからの段階のどちらについても、介入が病気の発症や進行を遅らせるかどうかを容易に調べられる。こういった特徴としては、予測可能な年齢でのアルツハイマー病による認知症の発症、症状が現れる何年か前に病気の病理学的兆候が現れること、認知機能の低下につながる他の条件を経験する可能性が低いことなどがある。
R Batemanたちは、DIADの被験者144人をガンテネルマブ投与群、ソラネズマブ投与群とプラセボ投与対照群のいずれかに割り付けて、7年間観察した。どちらの薬も標的に結合したが、プラセボ群で得られた結果と比較して、AD発症を明らかに遅らせたり、防止したりする効果は見られなかった。しかし、無症状のプラセボ群が認知機能低下を全く示さなかったことを考えると、これらの治療薬の治療効果ははっきりしないままといえる。また、認知機能や臨床症状に対する有効性が観察されなかったことは、有効なAD治療薬開発の妨げになる可能性があるが、ガンテネルマブを投与した患者でADの生物学的特徴の多くが明らかに減少したことは、DIADの初期治療としては有用である可能性を示唆している。
著者たちは、今回の臨床試験によって、無症状の集団で認知機能を測定できる、もっと感度の高い改良された方法が必要なことがはっきりし、また薬剤の標的への結合を増やすために、もっと長期間にわたって高用量を使うことの必要性も明確になったと結論している。
doi: 10.1038/s41591-021-01369-8
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