注目の論文

社会科学:COVID-19による外出制限政策が都市部の犯罪の37%を減少させた

Nature Human Behaviour

2021年6月2日

Social science: COVID-19 stay-at-home policies linked to 37% reduction in urban crime

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)に対応するために世界各地で実施された外出制限政策は、23か国27都市において、平均37%の犯罪の減少と関連していることが、Nature Human Behaviour に掲載された研究で明らかとなった。

COVID-19パンデミックに対応して、各国政府がロックダウンを実施したことは、私たちの生活に大きな影響を及ぼしてきており、多くの国では現在でも大きな影響を及ぼしている。しかしながら、こうした政策が世界の都市犯罪にどのように影響を与えているかは分かっていない。

Amy Nivetteたちは今回、米国、ヨーロッパ、中東、アジアの23か国27都市における日々の犯罪件数を解析した。得られたデータを用いて、ロックダウンが各都市の6種類の警察記録犯罪(暴行、窃盗、住居侵入、強盗、車両盗難、殺人)に及ぼした影響を、COVID-19以前の犯罪レベルと比較することで評価した。その結果、都市によって、また評価対象の犯罪の種類によって違いはあるものの、全体的に見ると、外出制限政策は犯罪の37%の減少と関連していた。平均減少率をみると、最も小さかったのは殺人であり(14%)、最も大きかったのは強盗(46%)と窃盗(47%)で、住居侵入(28%)、車両窃盗(37%)、暴行(35%)の減少率はこの範囲内にあった。公共の場における人々の移動をより厳しく制限することで、犯罪率がより大きく減少することも予測される。

Nivetteたちは、殺人の減少が限定的であったのはいくつかの要因が考えられると述べている。多くの社会において、殺人のかなりの割合は家庭内で発生しており、そのため外出制限政策の影響を受けない。また、組織犯罪、ギャング間抗争、麻薬取引に関連した殺人の件数もさまざまであり、これらの集団の行動は、組織犯罪に関与してない人々の日常生活の変化による影響をそれほど受けない可能性がある。

Nivetteたちは、今後の研究は、さらに多くの世界の都市で集められたデータを用いて、都市犯罪の動態を長期的な視点で掘り下げるべきであると指摘している。ロックダウンが、犯罪ホットスポットなどの特定の地域における犯罪パターンに及ぼす影響についても評価する必要がある。

doi: 10.1038/s41562-021-01139-z

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度