注目の論文
発生学:ヒトの発生の初期段階の新しいモデル
Nature
2020年6月11日
Embryology: A new model of early human development
ヒトの初期胚発生の新しい3次元組織培養モデルについて報告する論文が、今週、Nature に掲載される。ヒトの細胞を用いて作製されたこのモデルは、発生の重要な段階である初期胚段階について理解を深めるのに役立つと考えられる。
ヒトの発生の初期段階において、複数個の細胞でできた球状の小さな塊(胞胚)が、それ自体の一部を包み込んで、先端と後端のある3層構造(原腸胚)を形成する。この過程は、原腸形成と呼ばれ、それぞれの層は、その後、体内のさまざまな種類の組織を形成するようになる。これまでにマウスの細胞を用いた3次元モデルが作製されてきたが、ヒトの原腸形成の研究は、適切なモデルがないために難度が高い。
今回、Alfonso Martinez Ariasたちの研究チームは、ヒト胚性幹細胞由来の3次元構造「ガストルロイド」を生成したことを報告している。このガストルロイドは、浮遊培養で増殖させたヒト胚性幹細胞の集塊で、ヒトの発生の初期段階の重要な事象を再現する。これらの幹細胞は、分化して3つの特徴的な層の派生物を形成し、ガストルロイドは、長く伸びて先端と後端を有するようになる。また、遺伝子発現の重要な変化も観察されており、Ariasたちは、3日齢のガストルロイドが20日齢のヒト胚の重要な特徴を模倣しているという考えを提示している。彼らは、このモデルが、ヒトのボディープランの出現の3次元モデル化に向けた第一歩だと考えている。
doi: 10.1038/s41586-020-2383-9
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