【化石】絶滅した大型類人猿の解明を進める古い歯のエナメル質
Nature
2019年11月14日
Fossils: Ancient enamel sheds light on extinct giant ape
絶滅した大型類人猿種であるギガントピテクス・ブラッキーの歯のエナメル質の分析について報告する論文が、今週掲載される。今回の研究は、大型類人猿の進化と多様化の理解に役立つかもしれない。
ギガントピテクス・ブラッキーは、絶滅した巨大な類人猿で、1935年に1本の歯の化石試料をもとに初めて同定され、更新世(約200万年前~30万年前)の東南アジアに生息していたと考えられている。ギガントピテクス・ブラッキーの数多くの歯と4点の下顎骨の一部が見つかっているが、頭蓋化石は見つかっておらず、ギガントピテクス・ブラッキーと他の大型類人猿種との関係とギガントピテクス・ブラッキーの大型類人猿種からの分岐を解明することは困難だった。
今回、Frido Welkerたちの研究グループは、中国のChuifeng洞窟で発見された190万年前のギガントピテクス・ブラッキーの化石臼歯を分析した。Welkerたちは、この化石試料から古いエナメルタンパク質を回収し、雌のギガントピテクス・ブラッキーの臼歯である可能性があることを示している。さらなる分析は、ギガントピテクス属が約1200万~1000万年前に共通祖先を持つオランウータンの姉妹群であることも示された。今回の研究で得られた知見によれば、ギガントピテクス属の分岐があったのは中新世の中期または後期とされる。
Welkerたちは、このエナメルタンパク質が、これまでに配列解読されたものの中で最も古い骨格タンパク質だと考えている。そして、Welkerたちは、亜熱帯地域で見つかった化石標本に古いエナメル質タンパク質が残存していたことで、これまでプロテオーム解析法を適用できないと考えられていた地域と時代にプロテオーム解析の適用範囲が広がるという考えを提唱している。
doi: 10.1038/s41586-019-1728-8
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