イチゴの参照ゲノム配列を構築するプロジェクトが実を結ぶ
Nature Genetics
2019年2月26日
Strawberry genome bears fruit
イチゴの参照ゲノム配列がほぼ完全な形で構築された。この参照ゲノム配列は、人気の高いイチゴの原産地と進化史に関する新たな知見をもたらしてくれる。
八倍体の栽培種イチゴ(Fragaria × ananassa 「カマローザ」種)は8セットの染色体を持つ。英語ではstrawberryともgarden strawberryとも呼ばれ、その風味と香りから高い人気を誇っている。
今回、Patrick Edgerたちの研究グループは、八倍体イチゴのゲノムの高品質アセンブリーとアノテーションについて報告し、10万個以上のイチゴ遺伝子が同定されたことを明らかにした。Edgerたちは、二倍体のFragaria種(2セットの染色体を有するイチゴ種)の31セットのRNA分子群(トランスクリプトーム)の配列決定を行い、二倍体種とF. × ananassa種のそれぞれの発現遺伝子の配列を比較した。次に、Edgerたちは進化的解析を行い、F. × ananassa種の二倍体の祖先種として、エゾヘビイチゴ(Fragaria vesca)、ノウゴウイチゴ(Fragaria iinumae)と、これまで知られていなかったビリジス(Fragaria viridis)、シロバナノヘビイチゴ(Fragaria nipponica)の4種を特定した。以上の解析結果と現生種の地理的分布を組み合わせると、八倍体イチゴの原産地が北米であることが示唆される。
さらに、Edgerたちは、八倍体イチゴの4つのサブゲノムの間の進化ダイナミクスを解析した。その結果、1つの優性なサブゲノムが存在し、イチゴのメタボローム形質と病害抵抗性形質をほぼ制御していることが明らかになった。イチゴの進化と原産地が明らかになり、優性を示すサブゲノムが発見され、八倍体イチゴの高品質ゲノムが初めて構築されたことは、研究者と育種家が栽培種イチゴの風味と香りと病害抵抗性の改良を行うための強力なリソースとなる可能性がある、とEdgerたちは結論付けている。
doi: 10.1038/s41588-019-0356-4
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