【動物行動学】ジャイアントパンダは別の個体の鳴き声を近くで聞けば誰の声だか分かる
Scientific Reports
2018年9月21日
Animal behaviour: Giant Panda bleats provide ‘caller ID’ over short distances
ジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)の鳴き声は、20メートル以内の距離では、鳴いたのがどの個体かを、10メートル以内では鳴いた個体の性別を伝えていることを明らかにした論文が、今週掲載される。鳴き声に含まれる発声個体の同一性と性別に関する手掛かりは、うっそうとした竹林という視認機会が限定的な環境において至近距離で相互作用するパンダにとって重要な情報となる可能性がある。
ジャイアントパンダは、単独行動する動物であるため、配偶相手の居場所を知り、攻撃的かもしれない競争相手を避けるために、実効性のある情報伝達が不可欠である可能性が高い。雄のジャイアントパンダは、発情期の雌に遭遇すると高い確率で鳴き声を発することが知られており、こうした鳴き声が交尾活動の調整に重要なことが示唆されている。ただし、鳴き声で明らかになる情報は、生息地である竹林環境において確実に伝達されない限り、ジャイアントパンダの役に立たない。
今回、Benjamin Charltonたちの研究グループは、サンディエゴ動物園サファリパーク(米国カリフォルニア州)内の竹林を含む混合人工林で、ジャイアントパンダの鳴き声100回分(10頭の成体のそれぞれ10回分の鳴き声)の録音を再生して、再生装置のスピーカーからそれぞれ10、20、30、40メートル離れた地点でその音声を再録音した。この人工林における竹林の植生密度は、パンダの自然の生息地に近い。分析の結果から、ジャイアントパンダの鳴き声の音響構造の明瞭さは、竹林環境において最大20メートルまで保持されるが、10メートルを超えると鳴き声を発した個体が雄なのか雌なのかが分からなくなることが明らかになった。
今回の研究は、ジャイアントパンダが交尾関連の鳴き声の中で区別できる可能性の高い範囲を明らかにすることで、その繁殖戦略に関する新たな手掛かりをもたらしている。
doi: 10.1038/s41598-018-31155-5
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