【動物行動学】記憶を基に道具作りをするカラス
Scientific Reports
2018年6月29日
Animal behaviour: Crows can make tools from memory
カレドニアガラスは、記憶を基に道具を再現する能力を有することを報告する論文が、今週Scientific Reportsに掲載される。カレドニアガラスは、この能力によって自分たちの道具を徐々に改良している。他のカラスの道具の設計を覚えておいて、それを再現し、改良を加えるのだ。記憶から物品を再現し、改良するという形質は、ヒト以外の動物ではまれにしか見られない。
カレドニアガラスは、基本的な棒状の道具(スティックツール)、先端がかぎ状になった棒状の道具(フックツール)、植物の葉を破って作ったとげのある道具(バーブドツール)を作ることが知られている。しかしこれまでのところ、カレドニアガラスが他のカラスから道具の設計を学習しているのかや、その設計がだんだんと改良されていくのかについては、明らかになっていない。野生のカレドニアガラスは、道具作りを綿密に観察したり、模倣したりすることはできなさそうだが、さまざまな地域に生息するカレドニアガラスが作り出した特定の道具の設計は、少なくとも数十年間は維持され、徐々に改良されている。このため、カレドニアガラスの集団において道具作りの技能が何らかの形で広まっていることが示唆される。道具の設計が伝承され、進化する過程に関する1つの仮説によれば、カレドニアガラスの個体が他の個体の道具を使用あるいは観察して、特定の道具の設計を記憶し、それを基に自分自身の道具を再現するとされる。
今回、Sarah Jelbertたちの研究グループは、この仮説を検証するため、自動販売機のような機械にさまざまな大きさの紙を差し込んで、特定の大きさの紙が差し込まれた時に報酬が得られるようにした上で、8羽のカレドニアガラスがこの機械を使えるように訓練した。どの大きさの紙ならば報酬が得られるのかをカレドニアガラスが学習したところで、この研究グループは、もっと大きなカードをカレドニアガラスに与えたが、その際に見本となるような報酬が得られる大きさの紙を与えなかった。するとカレドニアガラスは、このカードを破いて、これまで報酬を受け取っていた大きさの紙に近い大きさのカードを作ったのだ。このことは、カレドニアガラスが自分自身の道具の設計を頭の中に思い描けることを示している。
doi: 10.1038/s41598-018-27405-1
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