注目の論文
患者自身のT細胞で乳がんを排除
Nature Medicine
2018年6月5日
Breast cancer eliminated by a patient’s own T cells
患者の免疫系の微調整により乳がん細胞を完全に排除できたことが報告された。これは、末期の乳がんにT細胞免疫療法を適用して成功した初めての例であり、従来からある治療法がどれも効果がない末期がんの治療法となる可能性がある。
がんの免疫治療法として臨床で最も効果が上がっているのは、免疫チェックポイントを阻害する方法と、T細胞を使う養子免疫療法である。前者では、抗体を注射することによって患者の体内でT細胞を活性化する。後者では、患者自身の血液や腫瘍からT細胞を採取し、その腫瘍を認識するT細胞だけを培養してから患者の体内に戻してやる。これらの方法の有効性はがんの種類によって大きく異なる。免疫チェックポイント阻害による乳がん治療の臨床試験は複数回行われているが、いずれも効果が見られていない。
S Rosenbergたちは、複数種の治療を試みたにもかかわらず転移性乳がんが進行してしまった1人の患者から、がん特異的T細胞を単離して再活性化した。この再活性化T細胞によって患者の転移病巣がすべて排除され、それ以後2年間、患者はがんの再発のない状態を維持している。著者たちは標的となったがん細胞の特性を分子レベルで詳しく調べているので、他の乳がん患者でこの方法がどの程度成功するかが予測できるが、これにはもっと大規模な比較臨床試験での確認が必要だろう。
doi: 10.1038/s41591-018-0040-8
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