注目の論文
【発生】幹細胞から作出された胚様構造
Nature
2018年5月3日
Development: Embryo-like structures derived from stem cells
シャーレの中で、マウスの幹細胞から初期胚に似た構造を発生させたことを報告する論文が、今週掲載される。この球状の細胞塊を子宮内に移植すると、胚が子宮壁に着床した時に見られる再構築現象に類似した現象が起こった。この球状細胞塊は、成熟胚にはならないが、初期発生の細胞培養モデルとして研究に生かすことができ、生物の一生の根幹をなす時期の基盤となる重要な過程の解明に役立つことが期待されている。
哺乳類の卵は、受精してから数日で胚盤胞に成長する。胚盤胞は、球状構造で、胚細胞の塊を含み、液体で満たされているくぼみとそれを取り囲む外側の細胞層からできている。過去の研究では、この外側の細胞層と胚細胞の両方から幹細胞株が得られたが、今回、Nicolas Rivronたちの研究グループは、この2種類の細胞がin vitroで相互作用して、胚盤胞に似た構造(「ブラストイド;blastoid」と名付けた)を形成することを明らかにした。
blastoidは、発生から3.5日を経た胚盤胞に形状が似ており、類似した遺伝子活性パターンを示す。blastoidの形成は、胚盤胞の場合と同様に、胚性幹細胞の内部細胞塊から発するシグナルによって外側の細胞層が発生する時に起こる。正常な発生の場合、この外側の細胞層が胎盤を形成するので、Rivronたちは、このモデルが胎盤の形成過程と胚が子宮内膜に着床する過程について理解を深める上で役立つことを期待している。
doi: 10.1038/s41586-018-0051-0
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