【がん】メチル化フィンガープリント法を使って脳腫瘍診断を改善する
Nature
2018年3月15日
Cancer: Methylation fingerprinting improves brain tumour diagnosis
DNAメチル化データを調べることによって脳腫瘍の同定を改善できることを報告する論文が、今週掲載される。
腫瘍を正しく診断することは、がんの治療にとって非常に重要だ。中枢神経系の腫瘍は既知のものだけでも約100種類あるが、とりわけ正確な同定が難しい。今回、Stefan Pfisterたちの研究グループはこの問題に取り組むために、メチル化データを分類する機械学習プログラムを開発した。メチル化は、DNAにメチル基分子が付加される過程で、これによってDNA内情報の利用可能性が変化する。DNAメチル化過程は、細胞の機能が正常な時に自然に起こり、それぞれの細胞に特徴的なメチル化フィンガープリント(指紋)を生じ、これはがんなどの疾患でも同様である。そのため、メチル化を調べれば、腫瘍の種類と腫瘍の発生源となった細胞の種類に関する情報が得られる。
Pfisterたちのプログラムは、約2800人のがん患者から集められた基準データでトレーニングされており、メチル化フィンガープリントを使って91種類の腫瘍を同定できる。Pfisterたちは、すでに医師が診断した1104例の中枢神経系腫瘍を用いて、このプログラムの検証を行い、そのうちの12%に誤診があったことを明らかにした。このプログラムは、診断の正確性が高いことに加えて客観性があるため、新しい稀少な腫瘍が見つかれば、そのようなものとして素直に同定する。この点は、医師による分類と異なっており、医師の診断では、非定型的な症例であっても既存のいずれかの種類のものとして分類しようとする圧力が働く。
Pfisterたちは、この新しい方法を利用しやすくするため、アップロードされたデータをわずか数分間で解析する無償のオンラインツールを作成した。このツールは、2016年12月以降すでに4500回以上使用されており、ユーザーが自らのデータを提供してアルゴリズムの精緻化を図るという選択肢も用意されている。メチル化の個別独自性を脳腫瘍の自動分類システムに組み込むことは、他の種類のがんについて類似の腫瘍分類アルゴリズムを作成するための青写真にもなる、とPfisterたちは結論付けている。
doi: 10.1038/nature26000
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