【化石】39億5000万年前の岩石に生命体の痕跡
Nature
2017年9月28日
Fossils: Evidence for life in 3.95-billion-year-old rocks
カナダの北ラブラドル地域で出土した堆積岩中の炭素質物質と炭酸塩の炭素同位体組成の分析が行われ、地球上には39億5000万年前から有機生命体が存在していたことを示唆され、これまでに判明したものの中で最も古い生命体の一部となる可能性が浮上している。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。
地球史の初期に生命体が存在していたことを示す証拠は非常に少なく、その理由として、原始生代(約36~40億年前)の岩石の発見例がわずかで、保存状態も悪いことが挙げられる。37~38億年前と年代決定されたグリーンランド南西部のイスア地球表層地帯で出土した堆積岩の同位体分析からは、この堆積岩に含まれるグラファイト粒が生物起源である(生物の活動によって生じた)可能性が示唆されている。しかし、ほぼ同年代のアキリア(グリーンランド)とヌブアギトゥク(カナダ)の岩石地層に関する最近の研究では、生物起源グラファイトは発見されていない。
今回、東京大学の小宮剛(こみや・つよし)たちの研究グループは、北ラブラドル地域のサグレックブロックで出土した最古の変成堆積岩として知られる約39億5000万年前の岩石に含まれるグラファイトを調べた。今回の研究では、この変成堆積岩の詳細な地質学的分析が行われ、グラファイトと炭酸塩の濃度と炭素同位体組成が測定された。その結果、このグラファイトが生物起源であることが明らかになり、小宮たちは、グラファイトの結晶化温度と母岩の変成温度がほぼ一致しており、このことはグラファイトが後の時代のコンタミネーションによって生じたものではないことを示していると指摘している。
小宮たちは、この変成堆積岩から生物起源グラファイトが発見されたことで、グラファイトを産生していた生物の地球化学的研究が行われ、その結果として地球上の初期生物に関する手掛かりがさらに得られるようになる可能性があるという考えを示している。
doi: 10.1038/nature24019
注目の論文
-
5月9日
生物学:人為起源の地球規模の変化が感染症伝播リスクに影響を及ぼしているNature
-
5月8日
生態学:マッコウクジラの複雑な鳴音を調べるNature Communications
-
5月7日
遺伝学:APOE4遺伝子バリアントはアルツハイマー病の他とは異なる遺伝的タイプである可能性があるNature Medicine
-
5月3日
動物学:薬用植物を使って創傷治療を行う野生動物が初めて報告されるScientific Reports
-
5月3日
進化学:地球の磁場が弱くなっていたために地球上の生物の多様化が進んだのもしれないCommunications Earth & Environment
-
5月2日
人類学:長期的レジリエンスは苦難によって構築されるNature