医学研究:アカゲザルがカロリー制限したときの健康効果の解明
Nature Communications
2017年1月18日
Medical research: Clarifying the health-benefits of caloric restriction in monkeys
2つの長期にわたる霊長類研究の統合解析が行われ、アカゲザルにカロリー制限を行うと、健康が増進し、生存年数が長くなることが明らかになった。これらの研究で一見矛盾した結果が得られていたために、アカゲザルにおけるカロリー制限の効果については論争があったが、今回の統合解析でこの点がはっきりした。この解析結果について報告する論文が掲載される。
カロリー制限とは、栄養失調にならない程度に食物摂取量を減らすことだが、これによってモデル生物(酵母、線虫、ショウジョウバエ、マウスなど)の寿命が長くなることが明らかになっている。しかし、非ヒト霊長類やヒトにも効果があるかどうかは、あまり明確になっていない。アカゲザルを使った2つの研究が長期間実施され、一見矛盾した結果が公表された。一方で、カロリー制限によってアカゲザルの寿命が延びたという結論が示され、他方で、生存年数に対する影響はないが、アカゲザルの健康に役立つことが示唆されたのだった。
今回、この2つの研究を行った研究グループが一堂に会して、2つのデータを再解析し、カロリー制限がアカゲザルの健康と生存年数の両方に有益な効果をもたらすというコンセンサスを確立した。また、この研究グループは、それぞれの研究の結果の違いを研究計画の違い(例えば、カロリー制限を始めた時のアカゲザルの年齢、食餌の構成、給餌のやり方など)によって説明できる可能性を示している。今回の再解析では、適度のカロリー制限は有効だが、それ以上に食物摂取量を減らしてもアカゲザルにとってのメリットが増えないことも示唆されている。
今回の解析研究では、カロリー制限がアカゲザルの生物学的老化を遅らせるかどうかに関する決定的な証拠が得られず、アカゲザルの健康と生存年数に最大の効果をもたらす最低限のカロリー制限が何かということも断定されなかった。この研究グループは、カロリー制限の健康効果がアカゲザルでも維持されることを考慮すれば、ヒトの健康に対しても同様の有益な効果を生じる可能性があると考えている。
doi: 10.1038/ncomms14063
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