【神経変性】アルツハイマー病患者のアミロイドベータプラークが抗体療法によって減少する
Nature
2016年9月1日
Neurodegeneration: Antibody therapy reduces amyloid plaques in Alzheimer’s disease
軽度アルツハイマー病患者の脳内に生じたアミロイドベータ沈着物が抗体療法によって減少することを報告する論文が、今週掲載される。この論文には、前臨床データと第Ib相臨床試験の結果が示されているが、両者とも、アルツハイマー病患者のアミロイドベータを除去し、疾患を修飾する治療薬としての抗体の開発を続けることを支持している。
脳内にアミロイドベータタンパク質が蓄積することは、アルツハイマー病(AD)の大きな特徴だ。アミロイドベータに関連する毒性は、アルツハイマー病の特徴的な進行の背景にあるシナプス機能不全と神経変性の主たる原因だと考えられているが、アミロイドベータを標的とする治療は成功を収めていない。
今回、Alfred Sandrockたちは、アミロイドベータタンパク質を選択的に標的とするヒトモノクローナル抗体「アデュカヌマブ」が開発されたことを報告している。Sandrockたちは、トランスジェニックマウスモデルを使った実験で、アデュカヌマブが脳内に入り、可溶性と不溶性のアミロイドベータを用量依存的に減らすことを明らかにした。
また、Sandrockたちは、第Ib相二重盲検無作為化プラセボ対照試験を実施して、アルツハイマー病を原因とする軽度認知機能障害または軽度認知症の患者と脳内にアミロイドベータ沈着物を有する患者にアデュカヌマブを月1回注射することの安全性と忍容性を評価した。この実験で、165人の患者が1年間にわたってプラセボまたはアデュカヌマブの注射を月1回受けた。そして54週間の治療が終わった時点で、アデュカヌマブの注射を受けた患者の方が脳内のアミロイドベータが有意に減少し、アデュカヌマブの用量の多い方がアミロイドベータの減少が顕著だったが、プラセボを注射された患者の脳内には変化がほとんど見られなかった。なお、この治療を中止した患者が40人いたが、そのうちの20人は副作用(例えば、用量依存的なアミロイド関連画像化異常)が原因だった。
さらに、アデュカヌマブの用量が多く、アミロイドベータプラークの減少が顕著だった場合は、認知機能低下の鈍化に関連していた。ただし、今回の研究は、認知機能低下に対するアデュカヌマブの効果というテーマに明確に取り組むことを目的としていなかったため、アデュカヌマブの臨床効果については今後の大規模な研究で確認する必要がある。
同時に掲載されるEric ReimanのNews & Views記事では、「抗アミロイドベータ治療法によって認知機能低下を鈍化させられることが確認されれば、アルツハイマー病の理解と治療法、予防法が大きく変わると考えられる」という結論が示されている。
doi: 10.1038/nature19323
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