崩壊寸前のチョウ個体群を救うには
Nature Climate Change
2015年8月11日
Butterfly populations on the verge of collapse
極度の干ばつが頻繁に発生するようになることがさまざまな気候変動シナリオで予想されているが、英国に生息する乾燥感受性のチョウ個体群が早ければ2050年に広範囲にわたって絶滅する可能性があるという報告が、今週のオンライン版に掲載される。各地域での景観管理と温室効果ガス排出量の削減を組み合わせて実施すれば個体群の崩壊を回避できる確率が高まることが今回の研究で明らかになった。
人間の活動(例えば農業)によって分断された生息地間の結び付きを修復すれば、極度の乾燥を原因とする気候感受性のチョウ種の個体群崩壊を減らし、その回復にも役立つ可能性がある。ただし、今後の気候変動における土地利用の変化の影響が明らかになっていない。
今回、Tom Oliverたちは、英国チョウ類モニタリング事業の129地点で収集されたチョウ個体群の長期データを調べて、1995年の大干ばつに対する28種のチョウの応答履歴を評価した。その結果、1995年の干ばつの後に大規模な個体群崩壊が起こった6種の乾燥感受性のチョウ(モンシロチョウ、キマダラジャノメ、シルワヌスコキマダラセセリなど)が同定され、生息地の分断化が進んでいない場合に個体群が急速に回復したことが判明した。Oliverたちは、さまざまな温室効果ガス排出シナリオと土地利用シナリオの予測を用いて、どのような景観管理を行うにせよ、単独で行うのであれば、2100年までに起こる地域的な個体群消滅の蔓延を阻止できないことを明らかにした。また、Oliverたちは、「対策を講じない」高排出シナリオにおいて、生息地の分断化が進んだ景観でのチョウ種の絶滅が早ければ2050年に始まることを見いだした。これに対して、強力な緩和策を必要とする低排出シナリオでは、生息地の分断化を抑えることで個体群の存続確率が50%を超える可能性が判明した。
Oliverたちは、生息地の面積を最大化することに集中するのではなく、連続した生息場所を修復し、それと同時に温室効果ガス排出量の大幅削減を実行することが、乾燥感受性のチョウの生き残りのために必要だと結論づけている。
doi: 10.1038/nclimate2746
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