生態学:沿岸保護における塩性湿地の役割
Nature
2026年10月22日
Ecology: Salt marsh contributions to coastal protection
大規模な波浪水槽を用いた実験から、塩性湿地は極端な波浪を受けても侵食がわずかであり、中程度の嵐に見舞われる沿岸で最も効果的な洪水防護機能を発揮する可能性が高いことを報告する論文が、Natureにオープンアクセスで掲載される。極端な嵐の際には、湿地の地盤は安定しているように見える一方、植生は大きな被害を受け、波を減衰させる能力が低下することがある。この結果は、塩性湿地の保全や再生が沿岸保護に最も効果的に寄与する場所を特定する一助となると考えられる。
海面上昇が進み、暴風雨にさらされる機会が増える中、波のエネルギーを散逸させる洪水対策の重要性が高まっている。塩性湿地は、標高の高い湿地面と、そこに生育する植生の表面粗さによって、波のエネルギーを散逸させる自然の仕組みとなり得る。しかし、極端な波の発生時に塩性湿地がどのように振る舞うかについては、これまで十分に調査されていなかった。
Pim Willemsenら(ワーゲニンゲン大学・研究センター〔オランダ〕)は、極端な波に対する塩性湿地の反応を分析するため、大規模な実験を実施した。著者らは、世界最大級の波浪水槽の一つである「デルタ・フルーム(Delta Flume)」に、306平方メートルの塩性湿地と植生を搬入して設置した。塩性湿地と植生に高さ最大2メートルの波を21時間作用させたところ、湿地表面の侵食量はわずか7ミリメートルにとどまった。地上部バイオマスは、最初の波浪試験後に、1平方メートル当たり831グラムから558グラムへと33%減少した。21時間後には、地上部バイオマスは初期値の20~25%に減少し、茎長は47%短くなった。植生による波の減衰効果は、大きな波よりも小さな波で大きかった。著者らは、高潮、沿岸標高、塩性湿地の分布に関するデータを用いて、これらの実験結果から世界規模での波の減衰効果を推定した。分析の結果、植生による波の減衰率は10%を超え、波高が1メートル以下の低エネルギー沿岸では最大50%に達することが示唆された。
著者らは、波のエネルギーが比較的小さい嵐にさらされる沿岸では、塩性湿地の再生と保全が、極端な嵐の影響を軽減する有望な手法となり得るとしている。高エネルギーの嵐に見舞われる沿岸でも、塩性湿地は、おもに防潮堤などの人工的な防護施設と併用することで、波の減衰に役立つ可能性がある。
シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 13(気候変動に具体的な対策を)、およびSDG 14(海の豊かさを守ろう)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。
- Article
- Open access
- Published: 21 October 2026
Willemsen, P.W.J.M., Mason, V.G., Zelst, V.v. et al. The contribution of salt marshes to wave attenuation during extreme storms. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-11145-8
News & Views: Can plants defend coasts against storms?
https://www.nature.com/articles/d41586-026-03063-6
doi: 10.1038/s41586-026-11145-8
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