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生態学:スヴァールバル諸島のホッキョクグマは海氷の減少に対して適応している

Scientific Reports

2026年1月30日

Ecology: Svalbard polar bears insulated against sea ice loss

Scientific Reports

ノルウェーのスヴァールバル(Svalbard)諸島周辺のホッキョクグマ(Ursus maritimus)個体群の身体状態は、海氷の減少にもかかわらず改善していることを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルScientific Reports に掲載される。この結果は、北極圏全体で海氷の減少と一致してホッキョクグマ個体数が減少しているという従来の観察結果とは異なる。

これまでの研究では、1980年以降、スヴァールバル諸島周辺のバレンツ海(Barents Sea)地域で10年あたり最大2℃の気温上昇が記録されている。しかし、2004年の調査では、バレンツ海のホッキョクグマ個体数は約2650頭と推定され、最近まで個体数が減少していないように見えたものの、その理由は明確ではなかった。

Jon Aarsら(ノルウェー極地研究所〔ノルウェー〕)は、1992年から2019年にかけてスヴァールバルで採取した770頭の成体ホッキョクグマの身体測定記録1188件のデータを用い、スヴァールバル個体群が安定していた潜在的原因を調査した。著者らは、脂肪蓄積量と身体状態を示す指標である体組成指数(BCI:body composition index)の変化を、27年間にわたるバレンツ海地域の無氷日数と比較した。著者らは、この期間に無氷日数が約100日増加した(年間約4日のペース)にもかかわらず、調査対象の成体ホッキョクグマの平均BCIは2000年以降に上昇したことを発見した。これは、海氷レベルが減少するにつれて脂肪蓄積量が増加したことを示している。

著者らは、スヴァールバル諸島のホッキョクグマの身体状態の改善は、トナカイ(Rangifer tarandus)やセイウチ(Odobenus rosmarus)など、かつて人間によって過剰に捕獲された陸上捕食対象の個体群回復に起因する可能性があると示唆している。また、海氷の減少によりワモンアザラシ(Pusa hispida)などの獲物がより狭い海氷域に集中し、それによってホッキョクグマの狩猟効率が向上していることも考えられるとの見解を示している。著者らは、海氷のさらなる減少が狩猟場への移動距離を増加させることで、スヴァールバル個体群に悪影響を及ぼす可能性があると推測している。これは、ほかのホッキョクグマ個体群でもすでに観察されている現象である。著者らは、温暖化する北極圏においてさまざまなホッキョクグマ個体群が今後どのように適応していくかを理解するためには、さらなる研究が必要であると結論づけている。

Aars, J., Ieno, E.N., Andersen, M. et al. Body condition among Svalbard Polar bears Ursus maritimus during a period of rapid loss of sea ice. Sci Rep 16, 2182 (2026). https://doi.org/10.1038/s41598-025-33227-9
 

doi: 10.1038/s41598-025-33227-9

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