注目の論文

気候変動:1.5℃の気温上昇に抑えるには各国が誓約した目標を徐々に引き上げる必要がある

Nature Climate Change

2022年11月11日

Climate change: Country climate pledges need ratcheting up to meet the 1.5 °C target

各国が2030年までに今よりも意欲的な気候変動対策を誓約することが、21世紀の気温上昇幅を1.5℃以下に抑える上で極めて重要だとする研究論文が、Nature Climate Changeに掲載される。

2021年11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP 26)の閉幕までに、151か国が、2015年のパリ協定での誓約よりも意欲的な目標を設定し、2030年までに温室効果ガス排出量のさらなる削減を目指している。これらの締約国は、パリ協定のメカニズムに従って、自国の気候戦略を定期的に再検討し、更新することが求められている。国際社会は、温室効果ガス排出量の削減目標のさらなる引き上げが必要なことを認識しているが、我々は、このように目標を徐々に引き上げることが2030年とそれ以降にどのような結果をもたらすのか、それに加えて、特定の地域や分野にどのような影響を生むのかについて理解できていない。

今回、Haewon McJeon、Gokul Iyer、Yang Ouたちは、一連の温室効果ガス排出経路のシミュレーションを用いて、近い将来(2030年まで)に意欲的な目標を徐々に引き上げることが、気温上昇幅の最大値を抑えるために必須なことを実証した。一方、意欲的な削減目標の漸進的な引き上げを2030年以降に遅らせると、目標値を超えた気温上昇が激化するリスクが高まり、気候変動緩和による長期的恩恵が減る可能性がある。また、短期的な目標値を徐々に高めることは、CO2以外の温室効果ガス(メタンなど)の排出量のさらなる削減につながる可能性もあり、排出量実質ゼロのエネルギーシステムへの移行を加速させることが期待される。

著者たちは、21世紀末の気温目標に着目するだけでなく、21世紀を通して気温上昇が目標値を超えないようにする排出経路を探究する必要性を強く指摘している。21世紀末までに目標値を超える気温上昇が顕著になれば、人類と生態系が重大なリスクにさらされる可能性があるからだ。

doi: 10.1038/s41558-022-01508-0

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