注目の論文

環境:英国における緊急対応時間への洪水の影響

Nature Sustainability

2020年5月19日

Environment: Flooding impacts emergency response time in England

英国では、低レベルの洪水時には、消防隊や救急隊などの第一応答者が急を要する現場に直ちに到着するのに苦労する可能性が高いことを報告する論文が、今週、Nature Sustainability に掲載される。この知見は、不利な地理的条件や気象条件の下での英国の緊急対応時間の分析から明らかになった。

救急隊、消防隊、救難隊は、洪水に対する第一応答者で、洪水時には救急サービスの必要性がかなり高まる。洪水は、道路を通行不能にしたり、交通渋滞をひどくしたりすることで、7~15分の時間枠内で対応するという第一応答者に期待されている救急サービスの能力に影響を及ぼす可能性がある。気候変動もまた、洪水の規模と頻度を増大させて、緊急事態への対応をより難しくすると予想される。

今回Dapeng Yuたちは、救急サービスが急を要する現場に到着する能力に、さまざまなレベルの洪水がどのような影響を及ぼすかを調べた。彼らは、英国の消防署の全ての所在地に対して、地形学的分析と交通マッピングを行った。

その結果、著者たちは、命に関わるインシデントに対して7分以内に救急車が到着し得るのは、英国の人口の84%であることを見いだした。しかし、30年に1回の河川洪水や沿岸洪水のシナリオではこれが70%に低下し、100年に1回の洪水では61%にとどまる。救急車が到着し得る高齢者人口の割合は、正常な状況では80%だが、30年に1回の洪水シナリオでは65%になる。また、著者たちは、対応時間の地域差も浮き彫りにしている。南東の低地やコーンウォールなどの農村地域では、30年に1回の洪水で対応時間の悪化が見られる。大ロンドンも、内水氾濫の悪影響を受ける。

著者たちは、救急サービスの地理的分布の影響はよく理解されているが、よりロバストな計画の立案には洪水の「連鎖的」な影響を用いる必要があると結論付けている。

doi: 10.1038/s41893-020-0516-7

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