ドライアイスが解き明かす火星の小峡谷形成
Nature Geoscience
2015年12月22日
A dry ice solution to Mars’s gullies
火星の小峡谷は、液体の水が流れたことではなくドライアイスの作用により形成された可能性があるとの報告が、今週のオンライン版に掲載される。この研究は、火星の小峡谷は水によって作られた地球の小峡谷と似ているように見えるが、その背景にある過程は全く異なっていることを示唆している。
火星の中緯度に見られる小峡谷(小さな谷が斜面に切り込まれている)は、地球で見られる川の流れによって形成された小峡谷と形状が似ており、共通の起源を示唆している。しかしながら、火星の現在の表面環境は小峡谷が見られる場所で大量の流体の水を保つには寒すぎる。小峡谷の年代は数百万年より若く(現在も形成中のものもある)、火星の表面で二酸化炭素(CO2)の氷が解凍する季節と一致して斜面で活発となり、その形成にドライアイスが関わっている可能性があることを示唆している。
Cedric PilorgetとFrancois Forgetは、斜面の表面を覆ったCO2の氷の層が解凍するにつれて、捕獲されたCO2の気体が氷の層の下で蓄積され、結果的にその下の土壌を不安定にさせて、気体と岩屑の流れの引き金となるという説を提示している。Pilorgetたちは、数値モデルを用いてこの過程をシミュレーションし、ドライアイスが駆動する過程は、火星における分布を含む小峡谷で観察される多くの特徴を説明できることを示した。
同時掲載のNews & Views記事で、Colin Dundasは、「他の世界を論じるときには、そこではなじみのないプロセスが可能であり、それは未知の環境ではなおさらであるということを注意して覚えておかねばならない」と述べている。
doi: 10.1038/ngeo2619
注目の論文
-
6月5日
気候:海と大気の相互作用が2023年の北大西洋熱波をもたらしたNature
-
6月5日
気候変動:干ばつの深刻化を招く要因の評価Nature
-
6月3日
天文学:天の川銀河はアンドロメダ銀河との衝突を回避できるかもしれないNature Astronomy
-
5月28日
古生物学:クジラの骨から作られた最古の道具の証拠Nature Communications
-
5月27日
生態学:世界的に過小評価されている外来種のコストNature Ecology & Evolution
-
5月23日
気候変動:ペンギンの糞が南極の気候変動の影響を軽減するかもしれないCommunications Earth & Environment