気候変動対策の社会的便益を強調すればイデオロギー対立による行き詰まりを打開できる
Nature Climate Change
2015年9月29日
Emphasizing social benefits of climate action can overcome the ideological impasse
気候変動を緩和するための行動がもたらす社会的便益(例えば、経済発展や博愛精神に満ちたコミュニティーの構築)を伝えれば、どのような信念をもつ人々でも気候変動に対する活動に積極的に取り組むようになることを示唆する研究論文が、今週のオンライン版に掲載される。この新知見は、気候変動に対する活動がイデオロギー対立によって阻害され、あるいは気候変動の個人体験に左右されることを示唆する過去の研究結果とは対照的なものとなっている。
気候変動対策は、多くの国々で優先度が低く、その原因として、政治的イデオロギーと気候変動に対する関心の欠如が指摘されることが多い。活動家がこの状況に取り組む際には、気候変動を科学的に説明し、その影響を説得力のあるやり方で示すのが通例となっている。ところが近年、この方法が行き詰まりを見せており、気候変動が現実かつ緊急の問題であることに疑いを抱く人々を説得できていない。
今回の研究でPaul Bainたちは、気候変動対策が社会にもたらすコベネフィット(共通便益)という広範な便益を強調するというもう1つの方法について調べた。Bainたちは、居住者のいる大陸を網羅する調査データを24か国(米国、英国、ドイツ、オーストラリア、中国、ブラジル、ガーナを含む)の6,000人以上の参加者から集めた。
その結果、全ての国において、コベネフィットを強調することで、気候変動に対する行動をとることへの参加者の意欲が高まったことが分かった。気候変動に対する姿勢、政治的イデオロギー、年齢、性別といった特徴のすべてが、こうした行動意欲に影響を及ぼすことが過去の研究で明らかになっていたが、今回の結果は、これらの特徴に左右されなかった。特に気候変動に取り組む意欲を高める上で効果的だったのは、経済発展と科学の進歩、道徳的で思いやりのあるコミュニティーの構築を強調することだった。その一方で、頻繁に取り上げられるコベネフィットの一部(例えば、汚染や疾患の低減)には有意な効果が認められなかった。
doi: 10.1038/nclimate2814
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