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全身性エリテマトーデスに対するbelimumab:突破口となるか

Nature Reviews Rheumatology

2010年3月1日

Connective tissue diseases Belimumab for systemic lupus erythematosus breaking through?

Belimumabは近年、全身性エリテマトーデス患者において疾患活動性を抑制することが示されている。この結果は、belimumabは全身性エリテマトーデスの治療パラダイムのどこに最も適切に位置づけられるのか、またbelimumabは現在検討中の他の生物学的製剤とどのように比較したらよいか、といった重要な疑 問を提起している。

全身性エリテマトーデス(SLE)に対する実験的治療を行った試験では否定的な結果が続いて失望させられたが、最近、突破口となりうるデータが発表された。2009年10月 の米国リウマチ学会年次総会において、Human Genome Sciences社の研究者らが、belimumab(Bリンパ球刺激因子[BLyS]を標的とする薬剤)による治療は活動性SLEに対し有効であることを示すデータを発表した6。このアプローチは、SLEの病因においてB細胞が中心的な役割を果たすことを示唆する広範なエビデンスに基づいている。Belimumabは、BLySを標的としてB細胞の刺激、増殖、分化を阻害することにより、疾患活動性に対するB細胞の働きを低下させる。

この成功を収めた試験は、52週目に主要エンドポイントの評価を行うことからBLISS(Belimumab International SLE Study)-52と名付けられており、開発プログラムの大きなターニングポイントとなった試験である。この開発プログラムは、数年前、SLEに対するbelimumabの第2相臨床試験においてその主要評価項目が達成されなかった際に、初めて注目を集めたものである1。結果は否定的であったが、事後解析により、研究デザインにいくつかの修正を加えれば、SLEに対するbelimumabの効果をより明確に示すことができる可能性が示唆された。これを受けて、BLISS-52試験は、研究登録の時点で抗核抗体(ANA)陽性である患者に対象を限定した。さらに、検出力を高めるために対象集団の規模を第二相試験より大幅に拡大した。最後に、新たにSLE Responder Index(SRI)を作成して、主要評価項目とした。SRIには、Systemic Lupus Erythematosus Disease Activity Index、British Isles Lupus Assessment Group評価ツール、医師の全般的評価の項目が組み込まれている。

この修正ツールを用いて、BLISS-52の研究者らは、無作為化二重盲検試験において2種類の用量のbelimumab(28日毎に1mg/kgまたは10mg/kg)+標準治療とプラセボ+ 標準治療とを比較した。疾患活動性が中等度の患者は組み入れられたが、生命にかかわる重大な臓器合併症を有する患者は除外された。52週間の治療後、高用量belimumab 群の57.6%(290例中167例)がSRIに基づく主要評価項目を達成したのに対し、プラセボ群では43.6%(287例中125例)であった。さらに、SRIの個々の項目および副次的評価項目の多くにおいて治療群と対照群の間に差が認められ、特にコルチコステロイド用量の平均値について顕著な差が認められた。

米国リウマチ学会でBLISS-52のデータが発表された数週間後に、Human Genome Sciences社はプレスリリースの中で、治療期間を76週間とすることからBLISS-76と名付けられた第二のSLE-belimumab試験により得られた肯定的な結果を発表した。BLISS-76のデザインは、患者集団と試験のエンドポイントに関してはBLISS-52をほぼ踏襲しているが、研究が実施された世界的地域およびバックグラウンドの薬物療法の頻度の点で異なっている。BLISS-76では、52週目に主要評価項目を達成した割合は、高用量belimumab群で43.2%(273例中118例)であったのに対し、プラセボ群では33.8%(275例中93例)であった。この差は小さなものであるが、統計学的に有意である。FDAが新薬承認の申請に対して効果を裏付ける肯定的な結果を示す研究を2件以上要求する可能性が高いことを考えると、この結果の重要性は明らかである。

Belimumab試験の有望な結果は、より標的を絞ったSLE療法の開発の追求における真の画期的発見となる可能性がある。しかし、現在のところ、短い抄録(BLISS-52)6とプ レスリリース(BLISS-76)7の形でしか結果が示されていないため、これらの結果の解釈を試みる際には慎重になる必要がある。現時点でbelimumab療法については、明らかにされていないことのほうが明らかにされていることよりもはるかに多い。SLEの症状のうち、どれがbelimumab療法に対して最も反応性が高い(または逆に、反応性が低い)のか。疾患経過のどの時点でbelimumabを開始すべきか(たとえば、活動性の抑制または寛解の維持、またはその両方を目的とした場合)。これまでの試験では焦点があてられていないが、ループス腎炎などの最も重篤なSLEの合併症の治療にbelimumabは有効であろうか。これらをはじめ他の多くの重要な問題に対する答えを得るためには、さらなる研究が必要である。しかし現在のところ、SLEの生物学的療法への道が開かれ、これらの疑問に対する答えが遠からず得られるであろうことは心強い。

Belimumab試験の成功は、SLEに対する他の生物学的療法の可能性を示唆している点でも意味がある。リツキシマブは、SLEに対して有望でありそうなことから大きな関心 が寄せられたが、否定的な結果を示した2件の試験により、その期待は裏切られた。リツキシマブはマウス- ヒトキメラ型モノクローナル抗体であり、プレB細胞からメモリーB細胞までを含めたB細胞系列で発現されるCD20抗原に結合する。この生物学的特性に基づき、臨床試験でリツキシマブの成績が思わしくなかったことから、B細胞を標的と する療法がSLEに有効である可能性に疑問が投げかけられた。しかしながら、BLISS-52およびBLISS-76の成功により、リツキシマブの再検討も求められている。

BLISS-52のデータが発表された同じ学会において、ループス腎炎患者に対するリツキシマブの大規模試験(LUNAR[Lupus Nephritis Assessment with Rituximab])のデータも発表された。この二重盲検プラセボ対照試験では活動性の増殖性ループス腎炎患者144例を検討したが、リツキシマブ+ミコフェノール酸モフェチル投与群とミコフェノール酸モフェチル単剤投与群の間で完全寛解率または部分寛解率に統計学的有意差は認められなかった(リツキシマブ群57%対 対照群46%)5。しかし、LUNARにおける奏効率は、BLISS-52試験の奏効率(58%対44%)とほぼ同じで、BLISS-76試験で報告された差(43%対34%)と効果量が同等であった。このため、LUNAR試験の結果が否定的なものであったのは、リツキシマブの有効性が低かったためか、試験の検出力が低かったためかの解明は、今後の課題である。

どのような状況であればSLEの治療にbelimumabを用いることができるかという問題は、時が解決するだろう。しかし、belimumab試験の報告はSLE治療における新時代の 到来を明らかに告げるものである。このことは、間違いなく科学界にとって興味深いものであるだけでなく、順調に行けばSLE患者の人生を変える見込みがある。

doi: 10.1038/nrrheum.2010.20

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