注目の論文
塩素イオンを標的にして神経疾患を治療
Nature Medicine
2013年10月7日
Targeting chloride for neurological disease
慢性疼痛や不安症、てんかんといったヒトの多くの神経疾患、精神疾患では、カリウム-塩素共輸送体である膜タンパク質KCC2の活性が低下している。今回、新しく開発した小型の分子によって、KCC2を活性化し、ラットの慢性疼痛を軽減できたとの報告が寄せられている。この知見が示唆するように、痛みの治療や、その他にもKCC2の活性が損なわれている病気の治療法として有望である。
KCC2は膜貫通型のポンプで、ニューロン内部の塩素イオン濃度を低く保つ働きをし、その働きで神経インパルスを阻害できる。そこでYves De Koninckたちは、KCC2を活性化できる薬があれば、阻害性シグナルを回復でき、神経疾患の治療に役立って、臨床的に期待できるかもしれないと考えた。Koninckたちは、低分子化合物ライブラリーをスクリーニングして、CLP257と呼ぶ化合物を見つけだした。さらに研究を進め、この化合物がKCC2の発現と活性を促進し、神経を損傷したラットの痛みを軽減させることを明らかにした。
Koninckたちは、CLP257よりもさらに薬理学的に優れた特性を持つ類似化合物を1つ見つけ、この化合物がラットの痛み軽減に関して、疼痛治療に用いられている既存薬プレガバリンと同程度の効果を示し、しかもプレガバリンによく見られる運動性の副作用が見られなかったと述べている。
doi: 10.1038/nm.3356
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