注目の論文

公衆衛生:青年期のストレスに取り組む

Nature

2022年7月7日

Public health: Tackling adolescent stress

青年が30分間のオンラインでのトレーニングセッションを1回行うと、ストレスに関連した思考や生理的応答が軽減されることを報告する論文が、Nature に掲載される。今回の研究によって得られた知見は、全国規模に拡張可能で、低コストで短期間の青年向けストレス治療法を示唆している。

今や、ストレス関連の不安症状や抑うつ症状に苦しむ若者が、記録的水準に達し、若者のメンタルヘルスにとって大きな脅威となっている。若者がストレス要因(学校での厳しい勉強、パンデミック時のロックダウンによる社会的孤立、先行きに対する不透明感など)を受け入れ、克服できるように支援する方法を見つけることは、若者が大人になるための準備を手助けするうえで非常に重要だ。これまでに提案された1つの対処法は、ストレス最適化というアプローチで、社会的なストレス要因と学業に関するストレス要因を最小化し、あるいは回避しようとするのではなく、そうしたストレス要因に積極的にかかわることを若者に教えて、ストレスに対処する技能を向上させることを目的としている。このようにストレスには増強効果があるという考え方(マインドセット)は、生理的ストレス応答(激しい心臓の鼓動、呼吸が深くなること、不安感など)が最適なパフォーマンスを引き出すという信念に基づいている。これとは別に、成長マインドセットというものがあり、知能は、努力と戦略と他者からの支援によって発達するという考え方だ。

今回、David Yeager、Christopher Bryanたちは、これら2つのマインドセットの考え方を相乗的に統合した介入法を考案し、中等学校から大学までの学生によって構成された6つのグループ(合計4291人)で検証した。この介入法には、ストレスには増強効果があるというマインドセットと成長マインドセットを目標とした相乗的アプローチに基づいた30分間のオンライン型トレーニングモジュールが用いられ、被験者の自己管理によって受講させた。その後、学生のストレス度(心理学的幸福、不安症状、学業成績、ストレス関連認知機能、ホルモン、心血管反応性など)が測定された。今回の研究では、2つのマインドセットに同時に取り組んだため、1回の介入セッションで、通常のストレスに対する不健全な反応や、それに伴う精神衛生上の悪影響から脆弱な若者を守ることができることが明らかになった。2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時のロックダウンの際に実施された研究では、このストレスの軽減をさまざまなストレス要因と状況に一般化し得ることが示唆された。

Yeagerたちは、若者が人類の将来課題に取り組む際に極めて重要な技能と創造性を発揮するために必要とされる資源と指導が、今回考案した拡張性のある介入法によって提供されるという考えを示している。

doi: 10.1038/s41586-022-04907-7

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