注目の論文
【医学研究】多発性硬化症の治療効果が期待される薬物
Nature Communications
2016年4月27日
Medical research: Drug offers potential treatment for multiple sclerosis
最近発見され、ヒトへの使用が承認されていないフルオロサミン(fluorosamine)が多発性硬化症の治療に役立つ可能性のあることがマウスの研究で明らかになり、この結果が、今週掲載される論文で報告される。
多発性硬化症は、ミエリンの損傷を原因としている。ミエリンとは、脂質とタンパク質の混合物で構成された鞘状の構造で、脳や脊髄の神経細胞を覆って保護している。このミエリンが再生する際の障害の1つが、神経の損傷部位付近で特異的に作用する分子シグナルであるコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)であり、CSPGは、最終的にミエリンの産生をもたらすオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の増殖と機能を阻害する。
今回、Wee Yongたちは、CSPGの存在下であってもOPCを増殖させる薬物を発見するために、245種の薬物を調べた。その結果、マウス細胞においてCSPGの産生を抑制し、OPCの増殖を促進するフルオロサミンが同定された。また、フルオロサミンを多発性硬化症のマウスモデルに注射したところ、ミエリンの産生が促進され、四肢麻痺から回復することが明らかになった。(この実験は、7~8匹のマウスからなる2つのグループに対して行われた。)このフルオロサミンによる新しい治療法をヒトに適用するには、フルオロサミンの安全性と有効性を評価するためのさらなる研究が必要だ。
doi: 10.1038/ncomms11312
注目の論文
-
4月25日
創薬:脳オルガノイドを使って神経発達障害の治療法を検証するNature
-
4月25日
医学:実験室で培養された「ミニ結腸」をがん研究に用いるNature
-
4月23日
がん:複数のがん種の診断ツールNature Sustainability
-
4月16日
医学研究:一部の患者では、抗体がパーキンソン病の運動機能症状の進行を遅らせる可能性があるNature Medicine
-
4月11日
生態学:森林管理の認証制度が哺乳類の大型種と絶滅危惧種の保護に役立っているNature
-
4月11日
医学:インフルエンザ感染に伴う肺損傷の予防薬候補がマウスの試験で好結果Nature