注目の論文
PI(3)K阻害剤の初姿
Nature Chemical Biology
2010年1月11日
A new peek at PI(3)K inhibitors
重要な薬物標的の最初となる構造が、Nature Chemical Biology(電子版)に発表される。その酵素、PI(3)Kは、がんや免疫障害など、さまざまな疾患に関与していることが知られ、複数の阻害剤に関して臨床試験が行われている。今回の研究から的確な薬物候補物質の設計に有意義な洞察が得られることが望まれる。
PI(3)Kには類似の変異体「アイソフォーム」が複数存在しており、そうしたアイソフォームに対する阻害剤の特異性が薬物候補物質の治療的可能性を左右するらしいことが徐々に明らかになってきた。今回、Roger Williamsたちは、ある特定のPI(3)Kアイソフォーム ― デルタアイソフォーム ― に関して、単体、さらにはその機能を阻害するアイソフォーム選択的および非選択的な物質とで形成された複合体の結晶構造を初めて明らかにした。総合すると、その構造からは、そうした阻害剤で効力と選択性をいかに両立させるかについての手がかりが明らかにされた。
PI(3)Kデルタアイソフォームは、特に免疫炎症、白血病、およびその他一部のがんへの関与が明らかにされており、その構造に関する今回の洞察からは、そうした疾患のための優れた薬物リード化合物が得られることが期待される。
doi: 10.1038/nchembio.293
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