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乾癬治療においてustekinumabはエタネルセプトより優れているか

Nature Reviews Rheumatology

2010年9月1日

Psoriasis Is ustekinumab superior to etanercept for psoriasis?

エタネルセプトとustekinumab はいずれも、乾癬患者に極めて有効であることが示されている。中等度から重度の乾癬治療に用いるこの2種類の生物学的製剤を比較する第3相試験により、12週間の投与においてustekinumabは高用量エタネルセプトよりも優れていることが明らかにされた。ただし、いくつかの疑問 も残されている。

腫瘍壊死因子(TNF)などの炎症性サイトカインは、慢性の炎症性免疫介在性疾患である乾癬の病理に重要な役割を果たしていることが早くから知られていた。このため、乾癬患者の治療においてはTNFを阻害する薬剤が極めて有効であることが示されている。われわれの臨床経験では、中等度から重度の乾癬患者の約20%が現在、エタネルセプト、イ ンフリキシマブ、アダリムマブなどの抗TNF薬により治療されている。エタネルセプトは最も使用頻度の高いTNF阻害薬の1つであり、中等度から重度の尋常性乾癬だけでなく、関節リウマチ、多関節型若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎における使用も承認されている。golimumabおよびcertolizumab pegolは、関節リウマチの治療に最近承認された新たなTNF阻害薬であるが、乾癬治療にも有用であると期待されている。

TNF阻害薬は、その抗炎症活性以外にも、17型ヘルパーT(TH17)細胞に対する阻害作用を持つことが示されている。この作用は、炎症性樹状細胞により産生され、TH17細胞増殖を誘導する産物を減少させることによって得られる。さらに、インターロイキン(IL)-12およびIL-23はナイーブCD4+リ ンパ球を誘導してそれぞれ1型ヘルパーT(TH1)細胞およびTH17細胞に分化させるが、これらのサイトカインが乾癬の主なメディエーターとして特定されている。

ustekinumabは、完全ヒト化抗体であり、IL-12とIL-23に共通のp40サブユニットを標的とする。患者計2,000例以上を組み入れた2件の無作為化プラセボ対照第3相臨床試 験(PHOENIX 1およびPHOENIX 2)(試験期間はそれぞれ76週間と52週間)において、ustekinumabで治療された患者の66~76%で乾癬の面積および重症度指数で75%以上 の改善(PASI-75)が達成されたのに対し、プラセボ対照群ではこのエンドポイントが達成されたのはわずか3~4%であった。これらの試験の結果から、さらに、12週間毎の ustekinumab投与による維持療法は、中等度から重度の乾癬患者の大部分に有効であることが示唆された。ただし、初期治療で部分寛解にしか至らなかった患者では、完全寛 解を達成するための最適な投与頻度は8週間毎であると考えられた。これらの結果に基づき、ustekinumabは2009年、中等度から重度の尋常性乾癬治療に対し、導入療法として 2種類の用量および維持療法として年4回の投与がFDAおよび欧州医薬品庁(EMEA)により承認された。

Active Comparator(CNTO 1275/Enbrel)Psoriasis Trial(ACCEPT)は、中等度から重度の乾癬患者におけるエタネルセプトとustekinumabのリスクとベネフィットを比較することを目的にデザインされた。12週間の比較投与期間中に、患者903例をustekinumab皮下注射(0週目および4週目に45mgまたは90mg)または高用量エタネルセプト(50mgを週2回、12週間)を投与する群に無作為に割り付けた。ustekinumab群では、45mgまたは90mgを投与された患者のそれぞれ68%および74%がPASI-75を達成したが、エタネルセプト群では57%にとどまった。全治療群において12週目の終わりから投与を4週間中断した。12週間のエタネルセプト投与が奏効しなかった患者には、引き続き16週目と20週目にustekinumab 90mgを投与した。これらの患者のうち49%が12週間のクロスオーバー期間中にPASI-75を達成した。試験の第1段階において割り付けられた治療が奏効した患者については、乾癬が中等度または重度で再発した場合にustekinumabを投与した。64週間の試験期間(治療44週間+追跡調査期間)に得られた結果から、ustekinumabは、抗TNF療法が奏効しなかった場合、代替的に使用できる極めて有効な治療選択肢であることが裏づけられている。また、乾癬の再燃を治療するためにustekinumabを再投与しても有効性の低下は認められなかった。最後に、エタネルセプトとustekinumabの有害事象プロファイルは同等であった。

ACCEPT試験には、乾癬治療における生物学的製剤を比較した無作為化試験としては最大規模の医療施設(世界中で67ヵ所)および患者(903例)が組み入れられている。しか し、エタネルセプトと比べたustekinumabの有効性と忍容性を評価したのは、12週間後のみであった。エタネルセプトの最大の効果は、ustekinumabと異なり、通常治療後24 週間で認められるため、このタイムスケールは極めて重大な意味をもつ。このため、両薬剤の効果が12週目ではなく24週目にどうであるかを知ることは興味深いと考えられる。また、本研究の患者のうち約30%が乾癬性関節炎(PsA)であったが、関節疾患に対するustekinumabの効果は評価されていない。別の第2相試験では、ustekinumabがPsAの徴候および症状をプラセボと比べて大幅に減少させたことが示されており、ustekinumabは関節疾患も軽減する可能性があると考えられる。しかし、留意すべきこととして、関節炎の改善についてはエタネルセプト療法による改善には劣ると考えられている。このため、PsA治療に対するustekinumabの有効性を最終的に確定するためには、研究デザイン、特に投与レジメンの最適化が必要である。

要約すると、ACCEPT試験により、中等度から重度の尋常性乾癬患者の短期(12週間)治療においてはustekinumabがエタネルセプトよりも優れていることが示され、医師は、 これらの患者の治療にあたってさらなる知識を得ることができた。本研究の結果では、IL-12/IL-23阻害の有効性がTNF阻害と比べて大きいことが決定的に示されているわけではない。これは、エタネルセプトでは投与開始後24週間にその最大治療効果が得られるが、本研究では12週間後にしか評価していないためである。また、本研究は、あらゆる患者に最適な治療を選択するという課題に一般的な解答を与えるデータを提供するものでもない。しかし、ustekinumabがエタネルセプト療法に反応しない患者の有効な代替治療となることは結論できる。TNF阻害薬の長期使用に関するデータは豊富にあるのに対し、ustekinumabについては、使用法、有害事象、関節病変に関する長期的経験が少ない(表1)。PsAおよび爪病変の存在、特定の併存疾患(肝炎、結核など)の存在、投与中断(手術などによる)の必要性などのパラメータも未検討である。これらの疑問に取り組む試験を実施することが、乾癬患者の治療に用いる選択肢をより正確に判断するために重要となるであろう。

doi:10.1038/nrrheum.2010.134

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