Research Highlights

T細胞サブセットがTNF阻害薬に対する反応とTBリスクを結びつける

Nature Reviews Rheumatology

2009年7月1日

T-cell subset links anti-TNF response and TB risk

腫瘍壊死因子(TNF)レベルの増加は、関節リウマチ(RA)を含むさまざまな自己免疫疾患の特徴である。このサイトカインは、炎症に重要な役割を果たしており、TNF阻害薬を用いたRAの治療の論理的根拠となっている。TNF阻害薬によるRA治療は、大きな成功をおさめている。しかし、モノクローナル抗TNF抗体インフリキシマブなどのTNF阻害薬を使用すると、結核(TB)の発症リスクが上昇する。Steff en Stengerらのグループは、このユニークなシナリオを活用してヒトTBにおけ る免疫機構を研究し、CD8+リンパ球の重要なサブセット(CD8+CCR7CD45RA+エフェクターメモリーT 細胞(TEMRA細胞))が、TBに対するヒトの最適な宿主防御に必要であることを明らかにした。抗TNF療法は、TEMRA細胞の数を減少させ、T細胞を介した抗菌活性を低下させて、結核菌による感染リスクを増加させる。彼らの研究結果はThe Journal of Clinical Investigationに発表されている。

研究者らは、活動性RA患者または強直性脊椎炎患者のリンパ球における2種類の溶菌酵素の発現を、インフリキシマブ投与前と投与中とで比較した。これらの重要な溶菌分子(細胞傷害性T細胞を介する細胞傷害によりマイコバクテリアに対する抗菌活性を付与する)のレベルは、2週間の投与後、全ての患者で有意に低下した。しかし、遺伝子と蛋白質の発現には影響が認められなかったため、Stengerらは、リンパ球サブセットの変化によって減少が起きたのかどうかを検討した。末梢血単核細胞(PBMC)サブセットを解析したところ、CD8+エフェクターメモリーT(TEM)細胞とCD8+TEMRA細胞が顕著な量の溶菌酵素を発現しており、TEMRA細胞の数が、インフリキシマブ投与後に減少したことが明らかになった。単離したTEMRA細胞は、結核菌に感染したマクロファージを、全PBMCやTEM細胞よりも効率的に溶解させることができた。また、結核菌に感染した単球と共に 培養すると、菌の増殖を全PBMCやTEM細胞よりもはるかに強く阻害した。研究者らは、CD8+TEMRA細胞が、抗マイコバクテリア活性の大きな原因であると結論づけた。

試験した全患者のTEMRA細胞の数は、初めの2週間の投与中にほぼ30%減少した。しかし、代わりにナイーブT細胞が増加したためにリンパ球の総数は変化しなかった。3ヵ月の投与後、TEMRA細胞の数は投与前の値に戻った。興味深いことに、TBの大半の症例は治療開始3ヵ月以内に生じる。これはTEMRA細胞レベルの減少と一致している。

しかし、抗TNF療法はどのようにしてCD8+TEMRA細胞を特異的に標的とするのだろうか。研究者らは、ビオチン化インフリキシマブでの標識の程度を測定することによって、活動性RA患者のPBMC膜上のTNFレベルを評価した。RA患者のリンパ球(特にCD8+TEMRA細胞)における結合は、健常対照者よりも亢進していた。RA患者のT細胞表面におけるTNF発現の増加が(その切断による細胞外腔への放出ではなく)、おそらく、疾患を発症させるT細胞の不適切な活性化の原因であろう。Stengerらは、補体を抗TNF被覆T細胞に加えたら、補体が活性化されて、これらの細胞を攻撃するようになるだろうと推論した。そのため、彼らは、活動性RA患者から新たに単離したPBMCを、インフリキシマブまたは 対照抗体と共に培養した後、補体を添加した。この結果、インフリキシマブ群4例全例で、対照抗体群に比べてTEMRA細胞数が減少した。このことは、これらの細胞が、補体を介した溶解の標的となることを示している。

インフリキシマブ投与RA患者のTEMRA細胞数の減少には、病原性結核菌を破壊する能力の低下が伴う。このような抗菌活性の低下を示すため、研究者らはTBに感染した単球とインフリキシマブ投与前後の患者から採取した自家PBMSを培養し、菌の増殖を評価した。投与前に採取したPBMSは、抗TNF療法中に採取したPBMSよりも、菌増殖をより有効に抑制した。インフリキシマブ投与中に採取したPBMCにCD8+TEMRA細胞を添加すると、菌増殖を抑制する能力が回復した。このことは、これらのCD8+TEMRA細胞が抗菌エフェクター細胞としての役割を果たすことを示唆している。これは、Stengerによれば、「免疫反応を操作するための標的として考えるべきである。この部分を強化することは、感染 症において有益だと考えられる。また、対抗制御により、自己免疫疾患を改善できる可能性がある。」

doi:10.1038/nrrheum.2009.115

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