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褐色細胞腫と傍神経節腫の画像診断

Nature Reviews Endocrinology

2010年4月1日

DIAGNOSIS Imaging of pheochromocytomas and paragangliomas

褐色細胞腫と傍神経節腫は稀な腫瘍で、研究と治療のいずれも時間と資源の両面で手間がかかり、かつ高額である。異なる画像診断法を体系的に比較した前向き研究により、褐色細胞腫もしくは傍神経節腫患者において適切な画像診断戦略を決定するにあたり、臨床医の手立てとなるような有用な結果が得られた。

褐色細胞腫は副腎髄質内のクロム親和性組織から生じた腫瘍で、傍神経節腫は頭蓋底から骨盤の間に局在する交換神経もしくは副交感鎖の副腎外腫瘍である。褐色細胞腫と傍神経節腫は、臨床的には古典的なカテコラミンクリーゼ(頭痛や動悸、発汗といった症状を伴う不安定性高血圧)を発現する。これらの腫瘍は、他の疾患のために実施したスキャンによって偶発的に検出されることが多く、多発性内分泌腫瘍症2 型、Von Hippel Lindau 病、コハク酸デヒドロゲナーゼサブユニット遺伝子の突然変異といった遺伝疾患が明らかな家族内でしばしば診断される。褐色細胞腫および傍神経節腫患者の10 ~ 30% は、遺伝性症候群を有している1-3。悪性腫瘍は褐色細胞腫の10%、傍神経節腫患者の40% で検出される4。稀な腫瘍で年間発症率は100 万人に1 人とされるが、一般に治癒もコントロールも可能であり、本態性高血圧といった他の診断とは治療法が大いに異なる。画像診断は、有望な治療戦略を評価するための診断プロセスの重要な部分である。画像診断にはさまざまな手法があるが、いずれも限界点や問題点を有することが指摘されている(表1)。Timmers ら5 は、褐色細胞腫または傍神経節腫患者を対象に種々の画像診断法を体系的に比較する前向き試験を実施し、この稀であるが複雑な腫瘍に対する最適な治療戦略を特定するうえで、臨床医にとって時間と資源の節約に役立つ有用な知見を発表した。CT はおそらく最も広く使用可能な画像診断法であり、多くの利点を有している。特に、褐色細胞腫または傍神経節腫の症状を呈し、カテコールアミン値が高い患者を検査する最初のステップとして有益である。最近のマルチスライススキャナーは速度が速くて解像度もきわめて高く、副腎皮質腺腫(偶発病変の頻度が高い)の同定が可能である。最近の非イオン性造影剤は、従来のイオン性造影剤に比べて安全であり、カテコールアミン放出を刺激しない。CT の主な限界点として、遺伝性症候群の家族や大きな腫瘍を除去した患者、さらには悪性腫瘍リスクの高い患者を経過観察するために複数回スキャンを行うには、放射線曝露量が高すぎることが挙げられる。

MRI は数年にわたり年1 回のスキャンで安全に済ますことができるため、遺伝性症候群の家族を頻回に評価するのには良好な方法である。しかし、MRI は速度が遅く、交感神経鎖(例えば首、胸、腹部、骨盤 など)を描出するのにかなりの時間を要する。メタヨードベンジルグアニジン(mIBG)シンチグラフィーは褐色細胞腫および傍神経節腫に対する特異度が高く、また、悪性疾患に対する高用量mIBG 投 与の治療可能性を示す。しかし分解能が低く、小さな褐色細胞腫(< 2 cm)が見落とされる可能性がある。傍神経節腫の検出にあたっては、褐色細胞腫に比べて陽性頻度が低い。また、同位体が尿中に排泄されることから、膀胱内での放射性ヨウ素の自然放射が骨盤や膀胱の傍神経節腫の同定を妨げるのではないかとの問題を呈する医師もいる。

PET による機能イメージングは、ポジトロン放出トレーサー(PET)とCT を組み合わせたものである。この手法では、トレーサー取り込み量で判定した腫瘍の生物活性に関する情報と高解像度かつハイスピード なマルチスライスCT を組み合わせて用いるため、実に強力である。放射線曝露量は単純CT よりも少ないが、頻回にスキャンすればリスクは増す。PET-CT の主な限界点に、費用とトレーサーの入手が可能かどうかという問題がある。

Timmers らは52 例の患者を対象に前向きの観察研究を実施し、18F-3,4- ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)、18F- フルオロ-2- デオキシ-D- グルコース(18F-FDG)、18F- フルオロドパミン(18F-FDA)の3 種類の18F 標識化合物を用いたPET と、123ImIBGシンチグラフィー、CT、およびMRI を比較した。18F-FDG-PET では非転移性腫瘍が88%、転移性腫瘍が74% 検出され、18F-FDA-PET ではそれぞれ78% および76% 検出された。一方、DOPA-PETおよびmIBG シンチグラフィーの転移性褐色細胞腫の検出率は低かった(それぞれ45% および57%)。 本研究により、コハク酸デヒドロゲナーゼB 遺伝子の変異を保有する患者の腫瘍は18F-FDG-PET による取り込み速度が非常に速いという過去の知見が確認されたが、これは腫瘍におけるグルコーストランスポー タ遺伝子の過剰発現に起因する7。トレーサーについては、18F-FDG だけが広く入手可能である。しかし、18F-FDG-PET は偽陽性シグナルの発現率が最も高く(3 例)、多くの上皮腫瘍やその他の悪性腫瘍によっても取り込まれてしまうことから誤診を招く可能性があることが示唆される。

以上のデータを考慮すると、症状があり、カテコールアミン値の上昇がみられる患者を検査するには、腹部および副腎のマルチスライスCT が最適な戦略となろう。もしその結果が正常な場合は、次のステップと して18F-FDG-PETによる全身スキャンを行う。一方、CT により腫瘍が検出された場合は、その病変が褐色細胞腫か傍神経節腫かにかかわらず、mIBG シンチグラフィー(腫瘍径> 2 cm)、もしくはMRI(同 < 2 cm)を次に実施する。また、遺伝性の褐色細胞腫または傍神経節腫を有する家族、もしくは悪性腫瘍リスクの高い患者を長期観察するためには、別の戦略を用いることにする。すなわち、最も腫瘍が生じやすい腹部は年1 回のMRI でモニターし、残りの交感神経鎖は3 年ごとの18F-FDG‐PET によりチェックする。

結論として、Timmers らは褐色細胞腫または傍神経節腫患者に対する最適な画像診断法を評価するうえで有用な情報を提供しており、その結果は現在利用可能な種々の手法の利点と限界に関して洞察を与えるも のとなっている。

doi:10.1038/nrendo.2010.22

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