Research Highlights

別のチロシンキナーゼ標的?

Nature Reviews Cancer

2007年7月1日

Another tyrosine kinase target?

遺残性または再発性の子宮内膜癌は、化学療法に不応であることが多い。Pamela PollockとPaul Goodfellowらは現在、線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)にみられる共通の変異を特定しているが、これは、不応性の子宮内膜腫瘍患者を治療する上でFGFR2を標的とすることの根拠となる。

英国Sanger CentreのCancer Genome Projectで子宮癌細胞の3系統にFGFR2のバリアント遺伝子が見つかり、このうち2系統は子宮内膜腫瘍由来であったことを受け、PollockとGoodfellowらは、子宮内膜癌でのFGFR2の変異スペクトルおよび変異頻度を検討した。FGFRを活性化させる生殖細胞変異は、頭蓋縫合早期癒合(早期骨化および頭蓋縫合の閉鎖)および軟骨形成異常(異常な骨の発達と増殖)を特徴とする症候群と関連する。ほとんどのFGFR2およびFGFR3の生殖細胞変異が6個のエキソンに限局していることから、PollockとGoodfellowらは、子宮内膜癌の主な組織学的サブタイプを代表する原発腫瘍検体187個を対象に、この6個のエキソンの配列を決定した。FGFRの変異は全腫瘍検体の10%で見つかり、その腫瘍のうち16%には類内膜性の組織構造変異があった。変異がFGFRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、キナーゼドメインから12個見つかり、このうち7個が頭蓋縫合早期癒合症候群および軟骨形成異常症候群に関連するものと同一であったことは、特筆に値する。

PollockとGoodfellowらが特定した癌関連変異のうち、最も多かったFGFR2-S252Wは、頭蓋縫合早期癒合症候群であるApert症候群と関係していたが、同症候群患者の癌の素因についてはまだわかっていない。この変異がリガンド結合親和性を増大させ、リガンド結合特異性を打ち消すことは既にわかっており、それがこの受容体の異常活性化につながると考えられる。他に特定された変異も同じく、FGFRを活性化すると考えられる。

PollockとGoodfellowらは、FGFR2の変異と類内膜性の子宮内膜癌患者の生存との間に関係はないとしている。しかし、上記変異が広く存在していることは、患者治療にアジュバント療法薬としてFGFR阻害薬を用いる根拠となる。実際、多発性骨髄腫治療のためのFGFR阻害薬(TK1258)の第1相試験が現在実施されている。また、Ras変異が、FGFR変異を伴うこうした症候群のように、強力な癌の素因とは一見無関係の発達性症候群と関連することとの類似性に注目するのも面白い。

doi:10.1038/nrc2180

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