Research Highlights

ゴミを取り出す

Nature Reviews Cancer

2006年2月1日

数年をかけて分析に力が入れられてきたものの、癌のバイオマーカーであることが確認された血漿タンパク質は、前立腺癌特異的抗原および癌抗原125など、ごくわずかしかない。Josep Villanuevaらは現在、腫瘍プロテアーゼ活性の結果として癌患者の血清中に生じるペプチドを用いて、癌を検知および分類できることを明らかにしている。

タンパク質分解に由来する数千というペプチド(腫瘍が産生する高レベルの活性プロテアーゼによる産物)については、多くの研究者が検討してきたが、結局は「生物ゴミ」になっていた。しかし、Villanuevaらは、血清サンプル中の腫瘍特異的ペプチドームのパターンを特定する質量分析法を開発した。これと類似した方法を試みた研究者はこれまでにもいたが、その研究の妥当性は十分に確認されていない。Villanuevaらは、質量分析法を基に、別個のサンプルを用いても再現される血清分析システムの開発を目標に掲げて研究に乗り出した。

Villanuevaらは、血清中のペプチドを同時に測定するため、手順を自動化して用いた。それは、分析物の捕捉に逆相で磁気ビーズを用い、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDITOF)質量分析結果を読み出す(質量分析法を基にしたほかの方法よりも分析感度が高い)というものである。Villanuevaらは、その結果を十分に解釈するため、データの統計解析を単純化および改良する最小エントロピーに基づくアルゴリズムを考案した。

Villanuevaらはこのシステムを用いて、進行した前立腺癌、膀胱癌または乳癌の患者から採取した血清サンプル106検体のプロファイリングを実施した。その結果、識別ペプチド61個(そのいずれもが分解産物)の分析に基づき、癌特異的であるだけでなく、癌の種類特異的なタンパク質分解パターンを特定することができた。続いてVillanuevaらは、血清サンプルの独立したバリデーションセットについて、この識別因子を用いれば進行した前立腺癌患者と対照の被験者とを識別できることを示した。

Villanuevaらは、血清ペプチドームのタンパク質分解パターンは、癌の検知のみならず、無痛性腫瘍と悪性腫瘍との識別にも用いられるのではないか、としている。手術または放射線治療を問題なく回避できる前立腺癌男性を特定するには、このような検査法がすぐにも必要である。また、以上の所見から、バイオマーカー発見を制限することになるため、プロテオーム解析にex vivoサンプルのタンパク質溶解の阻害を含めてはならないことがわかる。

doi:10.1038/nrc1807

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