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放射線治療が生殖能力に与える打撃は過小評価されている癌治療用放射線に

Nature Reviews Cancer

2003年2月1日

女性の卵子は放射線治療に対して医師が考えていたよりも2倍も傷つきやすいかもしれない。このような警告を癌の専門家が出している。

備調査で研究チームは、2単位の放射線(放射線量の単位はグレイ)照射により将来卵子になる女性の細胞が半減する可能性があると評価している。従来の評価では、 この影響を与える線量は4グレイとされていた。各種癌の典型的な治療では、12~30グレイの放射線で患部を攻撃する。

れは、腹部、骨盤または全身に標準的線量の一部に相当する量の放射線照射を受けるだけの女性でも、不妊になったり閉経が早くなったりする可能性があることを示す と研究チームを率いる英国エジンバラ大学のHamish Wallaceは述べている。「ほぼどんな放射線でも、女性患者の卵巣を破壊してしまうだろう」とWallaceは警告している。

価が修正されても、医師が放射線量を下げるとは考えられない。医師には癌性細胞の除去が不可欠なのだろうから。しかし、化学療法が代わりの適切な選択肢になるような症例では、最後の手段として利用する場合以外には、できれば放射線照射を避けたらどうかとWallaceは提案している。

allaceらの研究は、生殖問題に関するカウンセラーが女性患者に放射線治療後の不妊の危険性について情報を提供するのにも役立つかもしれない。 Wallaceは、放射線量と年齢に基づいて予想される卵子への損傷を大体予測する簡単なグラフを考案したいと思っている。「我々の研究は、若い女性患者の生殖能力の点数をつけるのに役立つ」とWallaceは述べている。

かし癌の専門家たちは、放射線感受性の最終的評価とそれに基づく予測はまだ不正確なことを認めている。「その評価法では不十分だ」と、英国マンチェスターのクリスティー病院で癌治療後の生殖能力を研究するSteve Shaletは言う。

卵母細胞を破壊する線量

性の卵巣に好ましくない影響を与える放射線治療は、卵母細胞とよばれる未熟な卵子を殺してしまう。卵母細胞の数は誕生後すぐに決まるので、この卵母細胞の喪失閉経をもたらしたり(卵母細胞の予備群が使い尽くされたとき)、不妊を引き起こしたりすることがある。

年もの間、これらの副作用はほとんど無視されてきた。医師の関心が、もっと差し迫った命を助ける問題に向けられていたからだ。「最近まで、生殖に及ぼす影響はほとんど考慮されていなかった」と、米国ノーフォーク市のイースタン・バージニア医科大学に所属する生殖専門医のRoger Gosdenは述べている。

在の改善された治療法では、多数の女性患者がかつては致命的だった癌から救われ、治療後の患者の生活の質が重視されなければならない。乳癌の治療後の生殖能力は、 多くの若い女性に影響を及ぼすので、特に緊急の問題である。

の治療に直面している女性のなかには、のちに補助的生殖技術で使うことを期待して、自分の卵母細胞または卵巣組織を凍結保存しておく人もいる。しかしこの方法は、 まだ大部分が実験段階にすぎず、「万能の方策があるとは思えない」とGosdenは述べている。

allaceらは、ヒトの卵母細胞の半数を破壊する放射線量、すなわちLD50(50%致死量)を算出した。子供のころ癌の治療を受けた6人の患者について、卵巣が使命を完了するのにかかる時間に基づき、Wallaceらは残存卵母細胞数を概算し、それから破壊された卵母細胞数を概算したのである。

doi:10.1038/fake862

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