Research Highlights

それほど無毒ではない

Nature Reviews Cancer

2002年9月1日

セイヨウオトギリソウ(St. John's wort)は薬草として何世紀もの間用いられており、薬草からつくられた薬なので無害なものであると広く思われていた。

かし、2000年にThe Lancetに掲載された独創的論文で、薬草はHIV患者の治療に使われるプロテアーゼ阻害剤インジナビルの血漿濃度を低下させることが示された。MathijssenらがJournal of the National Cancer Instituteの8月21日号に報告したところによると、薬草製剤は癌治療薬とも相互作用し、インジナビルの場合と同様にその効果を緩和する。

イヨウオトギリソウは穏やかに作用してうつ症状をやわらげると考えられ、癌患者に広く使用されている。しかし今回、薬草製剤が、シトクロムP450酵素系とP糖タンパク質薬物輸送体による薬物解毒経路を誘導し、それによって、これらの経路の基質となる薬物種の代謝を妨げることがわかった。

athijssenらは5人の癌患者をイリノテカンのみ、あるいはイリノテカンとセイヨウオトギリソウ両方を投与し、小規模な無作為試験を行った。イリノテカンの一部は、P450のイソ型酵素CYP3A4が介在する経路によって排出される。著者らは、セイヨウオトギリソウと同時に投与すると、活性代謝物 SN-38の血漿濃度が42%に減少したと報告した。また骨髄抑制も、イリノテカン単独の場合は約60%だが組み合わせた場合は8%もなく、大きく減少した。イリノテカンは治療係数の幅が狭いので、血漿濃度の減少は抗癌活性の喪失を導くと予想されるかもしれない。

athijssenらは、イリノテカンとセイヨウオトギリソウは組み合わせて投与するべきではないと結論づけている。そこではこれらの結果が、少なくとも部分的にCYP3A4の基質となる他の抗癌剤(エトポシド、タモキシフェン、パクリタキセル)の典型であろうと仮定している。したがって、薬物代謝と薬草製剤の機構、およびその相互作用への理解は、癌研究の重要な領域に光を当てるものである。

doi:10.1038/nrc912

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